破壊から再生へ。よみがえる往時の姿
色絵牡丹花獅子文八角大皿直径40センチを超える大皿は高度な修復技術により継ぎ目が確認できないほど完全に復元された。2019年のG20大阪サミット配偶者プログラム昼食会で紹介された作品。今回の展覧会には出品されないが、類品は展示される。現城主は陶片を「歴史を証言する重要な資料」と位置づけ、すべてを修復することは望んでいませんでした。しかし、ある程度形が残っているものは、元の器の形がわかるように修復することも重要であると荒川氏は考え、これらの陶片を“再生”させるプロジェクトが始まったのです。
色絵花鳥人物文瓶国内には伝世例がほとんど見られない逸品。器の胴部中央にあるハート形の窪みの中に、愛らしい鶏の親子が立体的に表現されている。金属の脚を付けてランプシェードの台として使われた。有田窯 1690~1720年代 ロースドルフ城蔵器の修復にあたっては、日本の高度な陶磁器修復の技術が用いられました。この難題に取り組んだのは、卓越した修復技術が海外でも高く評価されている日本の修復家。写真の八角大皿は、元は10片以上の破片でしたが、修復の痕跡がまったく見えない形で復元され、城に飾られていた頃の姿を取り戻しました。
五彩花卉文皿金属製の脚と手が付けられた皿。古伊万里を範にして中国で作られ、エキゾチックな趣を感じさせる。中国・景徳鎮窯 18世紀 ロースドルフ城蔵白く美しい日本生まれの磁器に、17世紀以降のヨーロッパの王侯貴族は強い憧れを持ち、金に糸目をつけずに買い求めました。日本からヨーロッパへと磁器が伝播し、国同士の争いに翻弄されて痛ましくも破壊された歴史。しかしそれらがわが国の修復技術によって往時の姿を取り戻したことを、再びヨーロッパの人々に伝えたい――。「古伊万里再生プロジェクト」は陶片をつなぐだけでなく、世代をつなぎ、世界をつなぐために動き出しています。
色絵唐獅子牡丹文 蓋付壺一見、古伊万里のようだが、日本製磁器の公式輸出が途絶えた時期に、ヨーロッパの窯で伊万里焼を写した器が作られた。古伊万里と古伊万里写しを見比べるのも興味深い。ヨーロッパ 19世紀 ロースドルフ城蔵 「海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~」展のご案内
伊東忠太の設計により中国風の意匠が際立つ大倉集古館。ロースドルフ城主であるピアッティ家は、平和への祈りを込めて、第二次世界大戦で破壊された古伊万里の陶片を、城の一室で一般公開してきました。本展では、海外初公開となるロースドルフ城のコレクションに加え、佐賀県立九州陶磁文化館所蔵の有田磁器の逸品、約150点が展示されます。
会期:2020年11月3日~2021年1月24日
会場:大倉集古館 東京都港区虎ノ門2-10-3
TEL:03(5575)5711
開園時間:10時~17時(入館は16時30分まで) 月曜休館
入館料:一般1300円、大学生・高校生1000円、中学生以下無料 11月3日~30日、隣接するホテル「The Okura Tokyo」でオーストリア料理を提供。「オーキッド」でアラカルト5品、「スターライト」でザッハトルテが楽しめる。特別宿泊プランもある。
2021年4月10日~6月13日に愛知県陶磁美術館、2021年9月18日~11月23日に山口県立萩美術館・浦上記念館に巡回予定(会期は予定)。
※「古伊万里再生プロジェクト」では活動への支援を募集中。
https://www.roip.jp「The Okura Tokyo」のオールデイダイニング「オーキッド」で楽しめる「ウィーン風ボイルドビーフ“ターフェルシュピッツ”」3980円。3種のソースが添えられる。
この特集の掲載号
『家庭画報』2020年11月号
撮影/本誌・坂本正行 取材協力/古伊万里再生プロジェクト 大倉集古館
『家庭画報』2020年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。