「四国の魅力」を味わう 第4回(全18回) 四方を海に囲まれ、自然の恵みが溢れる四国。秋には山海の幸が旬を迎えます。瀬戸内の美しい景色とともに、土地の食材を味わえる名店の料理、ご自宅で作れるレシピ、お取り寄せ情報をお届けします。
前回の記事はこちら>> 四国の東部に位置し、瀬戸内の穏やかな海、吉野川水系の清らかな水、四国山地の深い緑など豊かな自然に恵まれた徳島県。その土地が育む食材を、郷土を愛する料理人たちが滋味溢れる料理に仕立てます。
虎屋 壺中庵(徳島県・佐那河内村)
〔右・店主が自ら釣り上げた天然うなぎの茶漬け〕
店の横を流れる園瀬川とその近くの川は川魚の宝庫。自ら釣ったうなぎは、山椒をきかせて佃煮に。ご飯にのせてお茶を注げば絶品のお茶漬けになる。
〔左・秋の味覚を堪能。香り豊かな松茸の炊き込みご飯〕山の幸も豊富な佐那河内村。旬を迎えた松茸と地元産の米をシンプルに炊き上げる。なんともいい香りがする至福の締めくくりの一品。
<松茸の炊き込みご飯の作り方>松茸の軸は細切りにして、酒と醬油を少々加えて昆布を入れ、米と一緒に炊く。からりと焼いた笠に醬油とすだちの搾り汁をかけて、ご飯の上で程よく蒸らす。仕上げにすだちの皮をすり入れる。佐那河内でとれる土地の滋味を清らかに、シンプルに生かす
徳島市中心部から車で約40分、自然豊かな佐那河内村にひっそりと佇む「虎屋 壺中庵」には、全国から料理人や食通がひっきりなしに訪れます。
〔バター醬油が香る鹿肉のソテー〕
脂肪の少ないヘルシーな鹿肉を、相性のいいバター醬油でいただく。野生の臭みは驚くほど感じず、適度な嚙み応えとうまみがある。
<作り方>フライパンにサラダ油を熱して鹿肉を軽くソテー。焼き色がついたらバターを入れてからめ、さっと醬油を回しかける。鄙には稀なこの店の主人、岩本光治さんが「吉兆」嵐山本店での修行を終えて、生まれ育ったこの地に店を構えて35年。吉兆で学んだ料理の基本やおもてなしの心を大切にしながらも、より素材の本質に寄り添った料理へと進化を遂げています。
例えばお椀。「かつおをきかせた、うまみたっぷりのだしを使う店が多いけれど、うちは昆布が主。味つけは塩が主で醬油はほんの香りだけ」。その分、素材の持ち味がしっかりと感じられます。
〔和三盆の絶佳の風味が生きた栗きんとん〕
服部製糖所の「阿波和三盆糖」と、地元産の栗を使ったきんとん。ほくほくした栗の甘みと和三盆のやさしい甘みが絶妙に調和する。
<作り方>皮をむき、低温でじっくり蒸した栗をつぶし、甘さをみながら和三盆を加える。程よい甘さになったら茶巾絞りにする。絶品と評判の鮎の塩焼きやうなぎのかば焼きに使う魚は、自ら釣りに出かけます。「四国各地、岐阜や京都など、あちこちで釣り歩いていると、同じ魚でも川によって味が違うことに気づきます。それが面白くて、違いをどう表現しようかと考える。釣りが、素材を生 かすシンプルな料理に目覚めさせてくれたんやね」。
〔種なし品種「さなみどり」で作るすだちシャーベット〕
種が少なくジューシーなすだち「さなみどり」は地元の名産。その果汁をたっぷりと使った、さっぱりとして清涼感に溢れるデザート。
<作り方>氷砂糖と水で蜜を作り、すだちの搾り汁と合わせて凍らせる。ミキサーなどで攪拌し、再度凍らせてシャーベットに。待ちに待った実りの秋、佐那河内村でも柴栗や松茸がおいしい季節を迎えました。最近は鹿やいのししなど、肉質がいい「阿波地美栄(ジビエ)」も手に入ります。豊かな食材に囲まれた環境は、料理人にとって実に刺激的なことなのです。
右・主人の岩本光治さん。旅館と仕出し屋を兼ねる「虎屋旅館」の3代目として生まれ、高校卒業後、京都嵐山の吉兆で約5年間修行。結婚を機に生まれ故郷に戻り、1985年に旅館を改築して「虎屋 壺中庵」を始める。虎屋 壺中庵(とらや こちゅうあん)徳島県名東郡佐那河内村上井開1
TEL:088(679)2305
営業時間:12時(入店)、18時~19時(入店)
定休日:不定休
コース昼8000円~、夜1万5000円。要予約。