植物の秘めたるパワーを知り、日常生活に取り入れる
「植物を見ているだけで心が解放されていくのがわかります。生活の中に緑があると幸せな気持ちになれるのです」と話す、城戸真亜子さん。
カーディガン6万3000円 ワンピース17万8000円／ともにレ･コパン（サン･フレール） イヤリング22万8000円 手首側からブレスレット55万6000円 14万2000円／すべてニナ リッチ（エスジェイ ジュエリー）ガーデニングをこよなく愛する城戸真亜子さんと緑の健康効果の研究と普及に取り組む岩崎 寛先生に植物が身の回りにある生活の豊かさと楽しさ、そして日常に上手に取り入れるポイントについて語り合っていただきました。
（右）洋画家・タレント 城戸真亜子（きど・まあこ）さん洋画家として創作活動を行うほか、アートプロデュースやテレビ・CM出演など幅広い分野で活躍。オンオフの切り替え役としても植物は大切な存在。（左）千葉大学大学院 園芸学研究科准教授 岩崎 寛（いわさき・ゆたか）先生人と植物のよりよい関係について、エビデンスに基づく効果を検証。医学、薬学、看護学などの視点からも研究を進め、予防医学への植物の活用を提案。植物の世話をするとその生命力に励まされ、明日への活力や希望につながっていきます
《城戸真亜子さんの植物ライフ》15年ほど前から始めたベランダ園芸。花の栽培から始まり、ハーブ、野菜へと育種が広がっていったそう。なんとメロンを育てたことも。岩崎 園芸を始められたきっかけは？
城戸 クイズ番組の景品でいただいたホーズ社のクラシックなじょうろが可愛らしくて。これをベランダに置いてお庭を作ったら楽しいだろうなって。「植物が好き」というよりインテリアから入っていった感じです。
岩崎 その始め方はすごくいいですね。植物が好きな人はきっかけがなくても生活の中に上手に緑を取り入れられるのですが、興味のない人にはそれが難しい。だから、私は城戸さんのようにお気に入りのインテリアなどから始めることをおすすめしています。「好きな植物を見つけなきゃいけない」と考える必要はまったくないのです。
人類が誕生して以来、人と植物は近い関係性の中に城戸 植物にそれほど興味がなくても育てているうちに、どんどん引き込まれていきますね。仕事でうまくいかないことがあってもベランダで植物の世話をしている間はそのことをすっかり忘れ、リビングに戻ってきたときには気分を切り替えられている。また、枯れていると思った植物が春先になると勢いよく芽吹いてきて、その生命力に励まされたこともありました。
岩崎 城戸さんが体感されたことはまさしく園芸療法の源流そのものです。米国では帰還兵の心のケアに植物を活用したことにより園芸療法が発展しました。戦争の悲惨な体験から自分の存在意義に苦しんでいた若者が植物の世話をすることで自分も命を育むことに役立っているという実感を得て生きる自信を取り戻していったのです。
城戸 植物の秘めたるパワーを感じさせるエピソードですね。私も植物を見ているだけで心が解放されていくのがわかります。それに楽しみもあります。芽が出て花が咲いて実になって、それを摘んで食卓でいただく。生活がとても豊かになったのも園芸を始めてよかったことのひとつです。
岩崎 植物が育つまでの間、長い時間かかわり続けることが求められますが、毎日接しているからこそ愛着が湧いてきて、収穫して食べるときも味だけではない満足感がある。それが生活の豊かさを感じることにつながっているのですね。“幸せホルモン”も高まっているのではないでしょうか。
水、光、緑をテーマにした城戸さんの作品。「floating garden」油彩、60.6×72.7センチ、2014年制作城戸 本物の植物ではなく絵の場合でも、水と光、緑をテーマにした作品（上写真）を描いていると絵と一体化するような瞬間があり、とても幸せな気持ちになります。この絵を観てくださったかたが同じように感じてくださるととても嬉しいです。
岩崎 本当に美しい絵ですね。水と光、緑に共通する“ゆらぎ”には癒やし効果があります。それで描いた人も観た人も幸福感に包まれるのでしょう。
城戸 植物がある風景の絶えず変化していく様を表現したいと思いました。園芸の緑も気ままに生い茂っていく姿がユーモラスでいいなあと感じています。
岩崎 人工物ではないから予想だにしない格好になることも。植物のそういった面も生きていることをより実感させてくれますね。
悠久のかかわりを経て私たちの遺伝子には
植物で健康になれることが記憶されています城戸 そもそも植物にはなぜ健康効果があるのですか。
岩崎 大地に根を生やす植物は自分で動くことができない分、外敵から身を守るための防御作用をいろいろ持ち合わせています。例えば笹には殺菌作用、除虫菊には虫除けの作用があり、こうした植物が持つ健康効果を私たちは分け与えてもらいながら生き延びてきました。人類の誕生以来、人と植物はとても近い関係性の中にいるのです。
植物を生活に上手に取り入れるには楽しみを持つこと城戸 医学が発達した現代では、植物の健康効果を得られる機会がほとんどなくなってしまいましたね。
岩崎 ところが、私たちの遺伝子は植物に接すると健康になれることをしっかり記憶しているように感じます。私の研究では、公園にたった５分いるだけで血圧が高い人は下がり、低い人は上がって正常範囲内に収まっていく現象が確認されています。
城戸 それは驚きですね。コロナによる自粛期間中、園芸がブームになったのは本能的なものかもしれません。植物で健康になるためにはどんなつきあい方をすればいいですか。
岩崎 五感を使うことが重要です。アロマセラピーに代表されるように植物の香りには癒やし効果が認められていますが、香りだけでなく、植物が視野に入ってくるだけでストレスホルモンは低下していきます。
城戸 これからの季節は落ち葉の上を歩く感覚（触覚）を楽しんだり、踏みしめるときのサクサクという音（聴覚）を聴いたりするのもいいですね。
「使える庭」のお手本として岩崎先生がプロデュースしたリソルの森のハーブナーセリーで。岩崎 複数の感覚が刺激されると自律神経の副交感神経が優位になり、気分がゆったりします。また、植物を上手に取り入れるには、城戸さんがご提案されたような楽しみを持つことが大切です。意識しなくても緑と触れ合える環境を整えることが健康になれる秘訣だからです。自宅の庭も“眺める庭”ではなく、いろいろな楽しみが増える“使える庭”がいいですよ。この庭に植えて重宝するのがハーブです。
城戸 私もハーブは欠かさずに育て、お茶に入れたり料理に使ったりしています。ただ、植物を育てることをストレスにしたくないので、水やりには自動散水機を活用しています。
《城戸真亜子さんの植物ライフ》ベランダでお茶をいただきながら植物の様子を見るのが毎朝の日課。岩崎 植物と長くつきあっていくうえでは無理しないことが肝心なので、そういった工夫はおすすめです。
城戸 植物で健康になれることは新しい概念のように思いましたが、原点に戻っていく感じですね。ポストコロナ時代にも続く健康生活のあり方として注目していきたいです。
植物のある暮らしを体験できるリゾート施設東京ドーム70個分の敷地に広がる体験型リゾート施設。2020年7月にリニューアルオープンした「グランヴォー スパ ヴィレッジ」ではテントキャビンやテラスハウスが配置され、千葉大学のさまざまな学部の教員によりプロデュースされた“植物に寄り添う暮らし”が気軽に体験できる。
Sport&Do Resort リソルの森千葉県長生郡長柄町上野521-4
TEL：0475(35)3333
https://www.seimei-no-mori.com/
