植物は愛でるだけではもったいない!
植物で五感を刺激し治癒力を高め、病気にならない体づくりに生かすガーデンセラピーとは、森林療法、芸術療法、園芸療法、芳香療法、食事療法の5つの療法を統合した新しい自然療法で、日本で誕生しました。
さまざまな方法で植物と日常的に接することによって五感(聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚)を刺激し、脳を活性化させ、自己治癒力を高めて病気にならない体づくりや健康寿命の延伸に役立つことが期待されています(上図参照)。
ここでは、岩崎 寛先生が長年取り組んできた研究成果をもとに“愛でるだけではもったいない”植物の知られざる健康効果とその活用法について領域ごとに紹介します。興味があることからあなたのライフスタイルにぜひ植物を取り入れてみてください。
1.芳香療法
ハーブの香りはどのような利用法でも心身の疲れを癒やす岩崎先生たちの研究によって芳香性植物はその香りをさまざまな利用法で楽しんでも健康効果が見られることがわかっています。
研究の実験では、ハーブのミントを使い、①植物の香りを嗅ぐ、②お茶にして飲む、③精油を使う、④精油を配合した石けんを使う、の4つの利用法で効果を比較したところ、いずれの方法も血圧を正常値に近づけ、「疲労」を有意に減少させました。
また、①では「緊張・不安」を、②では「怒り・敵意」の感情を有意に和らげました。心身の疲れを感じたとき、お好みの方法で芳香性植物をぜひご活用ください。
資料提供/千葉大学園芸学部岩崎寛研究室ハーブ(ミント)を利用した前後での心理的変化ハーブ(ミント)を4つの方法で利用する前後の心理的変化を計測。健康な学生(男性7名、女性8名)が対象。
2.園芸療法
楽しみながら体を動かせるので運動効果も期待岩崎先生たちが園芸作業による運動効果を調べたところ、一連の作業(移植ごてを使って苗を植える穴を掘り、植物を両手で植えつけてじょうろで水やりをする)を行うと、前腕(総指伸筋、橈側(とうそく)手根伸筋、浅指屈筋)、上腕(左上腕二頭筋、左上腕三頭筋)、肩(三角筋)、背中(僧帽筋)の筋肉をすべて使っていることがわかり、園芸療法は体を動かすことにも役立っていました。
また、作業後は「疲れ」よりも「楽しさ」を感じる結果になりました。植物を扱うことで作業時の疲れが軽減し、楽しみや期待感の向上につながったと考えられています。
資料提供/千葉大学園芸学部岩崎寛研究室園芸作業時における各筋の最大筋力の割合各作業における最大筋力の割合を見ると、どの部位でも概ね20%MVCを超えており、特に前腕の筋肉をよく使うことがわかった。