【連載】日本の医療をリードする名病院と病院長 戦前は旧六医科大学の1つに位置づけられ、実地医学のリーダーとして地域医療を牽引してきた千葉大学医学部附属病院。実地診療に根ざした研究とそれを臨床に生かすことを得意とし、世界的に知られる名医も数多く輩出してきました。創立150周年の節目に向かって病院機能をさらに拡充する千葉大学医学部附属病院の使命と役割を紹介します。
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実地診療に根ざした研究で医療の向上に貢献
千葉大学医学部附属病院 病院長
横手幸太郎先生
千葉大学医学部附属病院 病院長
内分泌代謝・血液・老年内科学教授
横手幸太郎(よこて・こうたろう)
1963年、兵庫県生まれ。88年、千葉大学医学部卒業。96年、スウェーデン・国立ウプサラ大学大学院博士課程修了。2009年、千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座(名称変更に伴い、19年に内分泌代謝・血液・老年内科学)教授に就任。11年より同大学医学部附属病院副院長を兼務。20年4月、病院長、同大学副学長に就任。内科学・老年医学を専門とし、早老症の一種であるウェルナー症候群の診断・治療、動脈硬化予防の研究では世界的に知られる。“千葉医学”の伝統を受け継ぎ最先端の高度先進医療を実践
千葉大学医学部附属病院は、1874年に地域の有志によって病院が設立されたことに始まります。その後、官立に移管され1923年には旧六医科大学の1つに昇格。
以来、医師の育成や医学研究にも力を注ぎ、食道がん外科手術のパイオニアである中山恒明先生、胃二重造影法を開発した白壁彦夫先生、川崎病を発見した川崎富作先生など世界的に著名な医師を何人も輩出してきました。
「最大の特徴は、実地診療に根ざした研究に取り組んできたことです。研究成果は臨床に還元され、それは地域全体の医療レベルを向上することに貢献してきました」と病院長の横手幸太郎先生は説明します。
〔確かな知識と技術を持った人間性の豊かな医療人を育成〕院内にある教育研修棟には、シミュレータや模擬患者を教育・研修に活用する複数のラボがあり、すべての医療専門職者を対象に系統的なトレーニングを実施している。写真提供/千葉大学医学部附属病院この“千葉医学”と呼ばれる伝統と誇りは現代にも脈々と受け継がれ、とりわけ近年はがん医療の分野で高い評価を受けています。
「特に定評があるのは食道がんをはじめとする消化器がん、肺がん、泌尿器がん、脳腫瘍です。しかし、この分野にかぎらず、全科において国内でも最高水準の集学的治療を提供しています」と横手病院長は胸を張ります。
〔「臨床研究中核病院」として新しい治療の開発に取り組む〕2017年3月、国立大学病院では6施設目となる臨床研究中核病院に。臨床試験部を中心にベンチャー企業とも連携しながら新しい治療の開発に取り組む。写真提供/千葉大学医学部附属病院さらに、最先端の高度先進医療を実践すべく、2021年1月には最新鋭の医療機器や設備を有する中央診療棟を開設する予定です。
「がん患者さんの利便性にも配慮し、日常生活を営みながら抗がん剤治療が行えるよう通院治療室も拡充しました」。
外来棟の最も眺めのよい場所に広いスペースを確保し、年間1万2000件以上の薬物療法を実施しています。
〔新しい中央診療棟では癒やしを重視した医療環境を提供〕新しく開設される中央診療棟では患者がリラックスして検査や治療を受けられるように環境照明などを導入し、癒やし効果を重視した医療環境を提供。写真提供/千葉大学医学部附属病院また、同院は全国で13か所しか承認されていない臨床研究中核病院の1つです。iPS細胞を用いたがん治療など臨床応用を目前にした研究が複数あるそうです。
「治療法が十分ではない病気はまだまだあります。臨床の中からシーズ(研究のタネ)を拾い上げ、新しい治療の開発につなげるという当院の強みを生かした医療活動を展開し、その存在価値を示していきたいと思います」。