温和な役柄から冷酷非道な役柄まで自在に演じる段田さん。20代半ばから30代半ばまで、野田秀樹さん主宰の劇団「夢の遊眠社」で活躍していた。劇作家・森本 薫が文学座に書き下ろし、1945年の初演以来、杉村春子さんが947回にわたって主人公の布引けいを演じ続けた『女の一生』。この日本演劇史に輝く不朽の名作が、11月に新たな布陣で上演されます。主演は大竹しのぶさん、演出は人気ドラマ『半沢直樹』での紀本常務役も記憶に新しい段田安則さん。けいの夫となる伸太郎役で出演もする段田さんに、見どころなどを伺いました。
――明治から大正、昭和と移り変わる時代を背景に、一人の女性の40年間を描く名作『女の一生』。どのような経緯で演出を引き受けられたのですか?「2~3年前、“今度『女の一生』を大竹しのぶさんでやるから、読んでみてほしい”と戯曲を渡されたんです。しばらくして“演出もやったら?”とお話をいただきました。読んでみたら、本当にいい本(台本)だなと感じ入りまして、さほど深く考えないうちに“じゃあ、やります”と即答してしまったというのが経緯です。僕はこれまでに2度、舞台の演出をしていますが、その2作ともに出演もしています。この『女の一生』も、堤家の長男の伸太郎という役がとても魅力的だったので、それもやらせていただきたい、ぜひ出演もさせてくださいとお願いしました」
――主人公の布引けいを新たに演じる、大竹さんへの期待感はいかがでしょう?「それはもちろん大きいです! 長く役者同士としてご一緒してきましたが、大竹さんは、僕なんかがあれこれ言う必要がないくらい素晴らしい女優さん。お任せしておけば大丈夫です。ミュージカル『にんじん』もやっていらっしゃる(2017年に還暦で主人公の14歳の少年を演じた)ので、16歳のけいも違和感なくできると思います。ただ、演出の立場としては、それを観た方が、“あら、可愛いらしいわね”“16歳っぽく見えるわ”だけで終わってしまわないようにしたいなと。大竹さんがけいを演じるうえで何か手助けになるようなことを、少しでも言えたらいいなと思っています」