――現時点での稽古の手応えはいかかでしょう?「本番が楽しみなのはもちろんですが、演出家としては、本当にうまくやれるんだろうかという不安のほうが大きいです。まあそれは、初日が開いてからもついてくるんでしょうが。気になっているのは、文学座さんが気分を害していないかな?ということ。座付き作家が書き、看板女優が命がけでつくり上げてきた名作を、どこの馬の骨ともわからない奴が演出するわけですから、“うちの宝物に傷をつけたな!”みたいなことになったら具合悪いなぁと、ちょっとびびってます(笑)。とはいえ、腹を括ってやるしかないので、もしも失敗したときは、俺を起用した人間が悪い!ってことにするしかないですね(笑)」
――稽古では、演出家としてのご自分と、俳優としてのご自分をどう切り替えているのでしょう?「過去2度経験した限りでは、意外とすんなり切り替えられました。自分が出ない場面は当然、演出家としての目で見ていますし、自分が出る場面に関しては、最初は代役の方にやってもらって、ある程度の形を決めてから自分がやるようにしています。彫刻でいうと、まず大まかな役の形に削って、そこから自分でだんだん細かく彫って仕上げていくような感じです」
演出を手がけた舞台は、2009年の『夜の来訪者』(J・B・プリーストリー作)と2011年の『泣き虫なまいき石川啄木』(井上ひさし作)の2作品。