NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』と『オードリー』で主人公の父を演じている。「知名度が上がったという点では、朝ドラは今回の『半沢直樹』以上でしたね」。――『半沢直樹』の紀本常務役も印象的だった段田さん。役を演じる際にどんなことを大切にしていますか?「まず自分が楽しめること。それがどんなに嫌な役柄であろうと、その役が好きで、演じることが楽しいと思えるようにすることですね。あと、これは演出をするときにもいつも言っていることですが、相手の台詞をちゃんと聞くこと。単に言葉の意味を聞くのではなく、その時の相手の気持ちも全部ひっくるめて聞く。それをみんながやり出したら、芝居がとても楽しくなると思うんですよ。ただ、どうしても自分がやることに一生懸命になってしまうので、実際には難しい」
――お芝居もコミュニケーションですよね。実のあるやり取りには観客も自然と引き込まれますし、劇場はコミュニケーションの場なのだなと最近改めて感じます。「そうですね。演劇はお客さんの想像力を巻き込みながら作っていくもので、それはお客さんとのやり取りでもありますから。ただ、すべての息がぴったり合うなんてことは、なかなかない。そういえば、昔放送されたテレビ番組で、杉村春子さんが“舞台の上でも息が合って、それを観ているお客さんや裏方さんも含めて、すべての息が合って、今日の舞台はよかったね、なんていうことは、そうそうあるものじゃないわよ”というようなことをおっしゃっていました」
――それもまた、生の舞台であればこその醍醐味。令和の『女の一生』もとても楽しみです。「新型コロナを経験している今だからこそ、激動の時代を生きた布引けいの人生がより鮮明に浮かび上がるのではないかと思っています。この『女の一生』は、警戒警報が鳴る戦時中に生まれた作品。人間は芝居を観なくたって生きていけるわけですが、命がけで芝居を観た人たちがいたということが、興味深いですよね。今この時代に『女の一生』をやれるのは貴重な体験だなと思いますし、この先いろいろな媒体が出てきたとしても、案外、芝居というものは残っていく気がしています」
段田安則/Yasunori Danta
俳優
1957年、京都府出身。劇団青年座附属の青年座研究所を卒業後、劇団「夢の遊眠社」へ入団。1992年の劇団解散まで主力俳優として活躍する。以降も数々の舞台に出演し、シリアスな役柄からコミカルな役柄まで巧みに演じ分ける実力派俳優として、テレビドラマなどでも活躍。菊田一夫演劇賞 演劇賞、読売演劇大賞 大賞・最優秀男優賞ほか、多数受賞。
『女の一生』
2020年11月2日~26日/新橋演舞場 1等席/1万3000円 2等席/8500円 3階A席/5000円 3階B席/3000円 お問い合わせ/チケットホン松竹 電話0570-000-489
作/森本 薫 補綴/戌井市郎 演出/段田安則
出演/大竹しのぶ、高橋克実、段田安則、宮澤エマ、多岐川華子、服部容子、森本健介、林 翔太、銀粉蝶、風間杜夫
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_20201031/