——小説を書くとき、桜木さんの頭の中で登場人物が動いていたのでは? 映像で実際に動く雅代たちを観て、「そうきたか!」とか「やっぱりそうだよね」など思われたシーンはありますか?「正太郎(斎藤 歩)がミコ(余 貴美子)をおんぶするシーンの音楽が、ラストシーンみたいな壮大な曲で。“終わっちゃう!?”、“えーっ!?”って思ったら、そこからまた淡々と続いていく。飽きさせませんよね。雅代と宮川(松山ケンイチ)がホテルじまいをするシーンは、長回しだったんですって。そこで宮川を送り出すときの雅代の表情がなんと切ない。私はここで、何もかもが終わって今日が始まりといったことを書いたんですけれど、終わるって始まることだということを、改めて視覚で感じられたのは、とてもありがたいことでした。確かに、私の中でも登場人物は動いているんだけれども、伝わっていたことがわかって。武さん、私の頭の中をのぞいたんだろうなぁ(笑)」
——雅代の父・大吉役の安田 顕さんは、桜木さんのリクエストだったそうですね。「映画『俳優 亀岡拓次』の舞台挨拶が札幌であったときに初めてお目にかかったんですけど、そのときに私の書いたものが映像化されるときには出ていただきたいんですってお願いしたら、覚えていてくださって。最高に忙しかったはずなんです。何本も掛け持ちされているときで、(ロケ地の釧路には)日帰りだったって聞いて、よくぞ出てくださいました、と。出演者の方はみなさんお忙しい方ばかりで、そういう方たちが北海道で映画を撮ることを楽しんでくださったのが何よりの私へのごほうびです」
安田さんの出演シーンを見学した桜木さん。病人メイクだったため「完全にゾンビ(笑)」で驚き、安田さんに謝らせてしまったと後悔。