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アートってこんなにも自由だったんだ!「再読!! 5つの物語」を結城昌子さんがナビゲート

2020.11.17

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〔今月の美術〕
『ミュージアム コレクションⅡ その2
再読!! 5つの物語─美術が語る夢と現実』

『ミュージアム コレクションⅡ その2 再読!! 5つの物語─美術が語る夢と現実』

柚木沙弥郎作品の展示より。紙粘土による指人形《町の人々》2004年。壁面の綿布は、左から《うねり》、《点線》、《格子》、《半玉》、《赤の縦縞》、《だんだら》すべて2009年

ナビゲーター・文/結城昌子


とかく高尚に語られがちなアートという世界の中で、素朴派(ナイーブ派)の存在はとても貴重に思える。なぜなら素朴派と呼ばれる一群の画家たちがいなければ、アートはもっと窮屈で難解なものになっていたに違いないと感じるからだ。

世田谷美術館で開催中の『再読!! 5つの物語』を観て、そんな思いを新たにした。新しい企画を立てにくいコロナ禍の中、所蔵品を5つの切り口で紹介した4年前の展覧会を「再読!!」という形で再構成している。これが私にはすこぶる楽しかった。

「展覧会としては“二次利用”もしくは“ジェネリック”?に当たるので、200円という破格で観ていただくことになった」と館の方は笑う。

会場の導入として迎えてくれるのはシュルレアリスムの巨匠マックス・エルンストの彫刻だ。暗く不気味かと思いきや、作品《ヤヌス》はいたってかわいい。

続いて、今回の核となる素朴派の作品群。アンリ・ルソー、アンドレ・ボーシャン、カミーユ・ボンボワ。美術の専門教育を受けないまま好きで絵を描いた素朴派の画家たち。中心も周辺もない画面全体から、前のめりなパッションと愛がほとばしる。

私が妙に好きだったのは、アフリカの床屋さんの看板。「私のお店に髪を切りに来て!」と溢れる気持ちは、素朴派と共通している。

《床屋の看板》

《床屋の看板》1995年収集 地域:バマコ、国:マリ

俳人・河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)の書もたまらない。いいなあこの字。

染色家・柚木沙弥郎(ゆのき さみろう)は、人形をつくったり絵本の絵を描いたりもする。美麗とはいえない指人形なのに、集まると絵本の1ページに踏み込んだような魅力を発するから不思議だ。

ほかにジャン=ミシェル・バスキアや横尾忠則作品も。それぞれにやりたいことが貫かれている。だから同等に並べる。

立場も手法も異なる作品を、あえていっしょくたに展示する館の勇敢さが心地良い。「アートってこんなにも自由だったんだ」と再確認させてくれた姿勢に、心からの拍手を贈りたい。

結城昌子(ゆうき まさこ)
アートディレクター、絵本作家。近著にアート絵本シリーズ『小学館あーとぶっく14 広重の絵本』『小学館あーとぶっく15 北斎の絵本』。artand.jp.

『ミュージアム コレクションⅡ その2
再読!! 5つの物語─美術が語る夢と現実』

美術と生活をめぐる物語をテーマに、フランス素朴派から現代までのコレクションを紹介し好評を得た2016年の展覧会を再構成。「私をめぐる物語」「未知の文化と出合う物語」など5つの物語を立てて109点の作品を紹介する。

世田谷美術館 1階展示室
〜2020年12月6日まで
休館日:月曜、11月24日(11月23日は開館)
入館料:一般 200円(2階展示室『ミュージアム コレクションⅡ その1 吹田文明と版画集「東京百景」』も鑑賞可能)
ハローダイヤル:050(5541)8600
URL:www.setagayaartmuseum.or.jp
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/白坂由里 撮影/永野雅子

『家庭画報』2020年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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