樽で眠っているのは、瓶内2次発酵を行う前のベースワイン。新しい樽は繊細な味わいを損なうので、古いバリック(熟成樽)を使用。
スパークリングワインの天与の地としての目覚め
フランチャコルタでは、赤、白両方のワイン(非発泡性ワイン)が造られてきましたが、その名が広まったのは、
1960年代初め、スパークリングワインが生産されるようになってから。フランスのシャンパーニュ地方の伝統製法である「瓶内2次発酵」の工程を採用し、シャンパーニュとはまた異なった特徴を持つスパークリングワイン、イタリア語でいうところの「スプマンテ(発泡性ワイン)」を生み出したのです。
それから
30年余りを経て、フランチャコルタは瓶内2次発酵方式でのみ造られるイタリアワインとして初めて
DOCG(
統制保証付原産地呼称ワイン)の認定を獲得。同時に、それまではエチケットに表示していたスプマンテの文字がなくなります。フランチャコルタ
DOCGという名称が、生産地の領域とワイン名を表すと同時に、瓶内2次発酵を行った生産方式であることを表すことになったのです。
フランチャコルタはしばしばシャンパーニュと比較されますが、製造方法はほぼ同じでも、テロワール(土地の特徴)が異なるため、味わいも自ずと違ってきます。冷涼な気候であるシャンパーニュでは葡萄の糖度はあまり上がりませんが、温暖なフランチャコルタでは葡萄の完熟は比較的容易です。つまり、フルーティな果実の風味が期待できるのです。また、氷河によって形成された土地はさまざまな土壌が堆積しており、その複雑な地味を反映して、たとえ同じ葡萄品種であっても、畑が違えば全く違う味わいを持つようになりました。そうしてフランチャコルタは、フルーティで重層的な味わいのスパークリングワインとして、ワイン愛好家の間で確かな評判を獲得していったのです。
左/ブレンドしたベースワインは、酵母と糖分を加えて瓶に詰め、水平に寝かせて2次発酵させます。 右/2次発酵が終わり、熟成が完了したら動瓶工程に入ります。瓶は動瓶板に一本ずつ差し込み、毎日手作業で1/8ずつ回転させながら瓶の口を下に向けていき、3〜4週間かけて酵母の澱を瓶の口に溜める。