――離れて暮らす一人息子が可愛くて仕方ないのでしょうね。自分の仕事はこれだ、今後も俳優をやっていくぞと心を決めたのはいつ頃ですか?「東京に来て3年目ぐらいだったと思います。自分にはもう、これしかできないだろうな、これをやって行きたいと思うようになって。俳優になってよかったなと実感するようになったのは最近ですね。作品とか役柄によって、いろいろなことに向き合える仕事なので、普段は見られないような景色を見ることができている気がします。初舞台のときも、役者をやっているからこそ、これだけ大勢のお客さんの前で演じることができるんだなと、カーテンコールで実感しました」
――初舞台の『ヘンリー八世』、とてもよかったです。やはり緊張しました?「意外と緊張しなかったんです。稽古のほうが緊張しました。どんなふうに進めていくのかわからなかったですし、演出の吉田鋼太郎さんにしごかれるつもりで臨んだので。でも実際は、稽古でしごかれるどころか、毎日すごく楽しくて。本番はもうノリノリで、早く出番、来い!と思っていました(笑)」
――頼もしいです。目指している俳優像はありますか?「はっきりした俳優像は特にないのですが……苦手なものは極力減らしていきたいです。たとえば、ダンスとかミュージカルに、前はすごく苦手意識があったんです。でも、苦手なものこそ、実は自分をいちばんステップアップさせてくれるかもしれないと思って、固い頭を開放していろいろ観に行くようにしていたら、最近やっと、いつかそういうものにも挑戦してみたいなと、少しだけ思えるようになってきました(笑)。できるだけいろいろなことをやって、多くの人を楽しませることができる俳優になりたいですし、共感できる俳優でありたいなと思います」
――俳優になったことで、世界がどんどん広がっていますね。「本当にそう思います。『ヘンリー八世』を経験しなかったら、シェイクスピアの戯曲を読むことは一生なかったと思いますし、そもそも最初は言葉が難しすぎて、全然読めませんでした(笑)。それが、初めて難しい台本と向き合う中で、楽しさみたいなものも感じたんです。だんだん台本がボロボロになっていくことが嬉しい、というような。今は『ザ・空気 ver.3』に備えて、報道番組を見るようにしています。こういう題材のものに参加して、人前で演じる以上は、最低限の知識はきちんと身につけておきたいなと思って。もっともっと知らなければならないことがあるなと日々感じています」
2019年、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)でテレビドラマ初主演を務め、第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞新人賞を受賞した。