京都の料亭発、祝い肴+11品で祝う 村田吉弘さんの「3時間おせち」 第5回(全7回) おせち料理のすべてを家庭で作るなどとても無理だと、多くの人は思うかもしれません。確かに種類も多く、手間も時間もかかりそうです。でも11種がわずか3時間で作れるのであれば、チャレンジしてみたくなるのではないでしょうか。余計な手間を省き、必要な手順だけで仕上げるおせち料理を、京都の名料亭「菊乃井」主人の村田吉弘さんと考えました。祝い肴も、1種でも2種でも試してみましょう。手作りのおせちは、祝い膳の花形になるはずです。
前回の記事はこちら>> 煮しめは一つの鍋で作る
正月の重詰めに欠かせない煮しめ。具材を別々に炊いて、とよくいわれますが、村田さんは一つ鍋で一緒に炊くことをすすめます。短時間で仕上がる画期的手法です。
お正月の煮しめは濃いめの醬油で煮上げる関東風の煮物で、主として根菜類を用い、昆布としいたけが加わります。ご馳走づくしのおせち料理の中にあって、日頃親しんだほっとする味です。
材料の種類が多く、それらを一種ずつ炊くと、自ずから量も多くなりがちです。手間と時間もさることながら鍋の数も多く必要となり、ガスの火口が限られている家庭では、煮しめだけで1日がかりになりかねません。
そこで村田さんがすすめるのが「一つ鍋で作る煮しめ」です。
器/織部菊鉢 北大路魯山人 作下ごしらえもいたって簡単。硬い里いもはレンジにかけて柔らかくしておきます。しいたけと昆布は前もってもどしておきます。
あとは煮る直前に材料を切って、昆布を結び、こんにゃくを手綱にして下ゆでする、それだけです。切ってすぐに炊くので、れんこんも酢水にさらす必要はありません。
「一緒に炊くと一つの味になると思うでしょうが、それぞれの素材の味があるから、その持ち味はしっかり残っています」と村田さん。
鍋に入れるときは種類ごとにまとめ、一度に炊き上げること15〜20分。それぞれの滋味を秘めた煮しめの完成です。
【材料・4人分】
・里いも(正味)200グラム
・こんにゃく1/2枚
・にんじん(正味)100グラム
・れんこん(正味)100グラム
・どんこしいたけ(乾燥)20グラム
・早煮昆布20センチ長さ4枚
・粟麩4センチ長さ
・きぬさや8枚
・A(昆布のもどし汁100ml だし320ml 濃口醬油・みりん各40ml 砂糖15グラム)
・柚子・サラダ油各適量
【下準備】
(1)しいたけは一晩水につけてもどす。粟麩は一度冷凍し、半解凍の状態で1センチ幅に切り、油で揚げる(生をそのまま揚げると破裂するので注意する)。早煮昆布は水でもどして結んでおく。
(2)にんじんは皮をむき7〜8ミリ厚さの輪切りに、れんこんは皮をむき1センチ厚さの半月に切る。里いもは皮を六方にむき、600ワットのレンジに約5分かける。
(3)きぬさやは筋を取り除き、塩を入れた湯でゆでる。こんにゃくは5ミリ厚さに切り、真ん中に縦の切り込みを入れ、端をくぐらせて手綱にする。これをゆでてあくと臭みを抜く。
【煮る】
鍋に粟麩ときぬさや以外を材料ごとに分けて並べ入れ、Aを加え、落としぶたをして強火で煮る。
煮汁が1/3量になったら粟麩を加え、煮汁がほぼなくなったら火からおろす。
器に盛り、きぬさやと刻んだ柚子を添える。
〔特集〕京都の料亭発、祝い肴+11品で祝う 村田吉弘さんの「3時間おせち」(全7回)
調理/村田吉弘 撮影/久間昌史 取材・文/松田純子
※3時間には祝い肴の調理時間、乾物をもどす時間などは含まれません。
写真とレシピの分量は異なる場合があります。
『家庭画報』2021年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。