大河ドラマはすべてにおいて特別
林 それにしてもすごいですね。その若さでNHK大河ドラマに主演とは。
吉沢 僕もびっくりしました。出演経験もない大河ドラマで、まさかいきなり主演をやらせていただくことになるとは思わなくて。
林 吉沢さんは『なつぞら』(19年度上半期のNHK連続テレビ小説)の天陽(てんよう)くん役で、みんなの心を掴みましたよね。私も観ていましたよ。
吉沢 ありがとうございます。
林 最初の登場シーンで、畑に座っていたでしょう? あれでもうハートを鷲掴みですよ。見たこともないような美しい青年が北海道の景色の中にあって、この人は誰!?って。
吉沢 天陽は少女漫画に出てきそうなキャラクターでしたから(照れ笑い)。それまでは若い世代の人が観るような作品に出ることが多かったので、あのドラマで幅広いかたに知ってもらうことができて、ありがたかったです。
林 俳優さんとしては、あまりにイケメン、イケメンといわれると、むくむくと嫌な気持ちになったりしませんか?「それだけじゃないぞ」って。
吉沢 前は嫌でした。わりと三枚目だったり、根暗で闇を持っているような役をやることが多かったので、余計に「そこ(顔)しか見られてないのかな」と。逆に「俺、もっとやれるし」という感じで、燃えたりしていました。
林 最近はもう慣れた?
吉沢 というより、いつかいわれなくなるだろうし、そういわれる時期にいわれるのは、いいことなんだろうなと思うようになって(笑)。ただ、わかりやすい二枚目の役は、いまだになんだか恥ずかしくなっちゃいますね。
「見たこともないような美しい青年で、
この人は誰!? って思いました」(林さん)
林 今回の大河の渋沢栄一役で、誰も「イケメン俳優」なんていわなくなると思いますよ。年を取っていく顔も見せなきゃいけないし、ちょっと嫌な面も演じるだろうし。撮影はいつ頃始まったんですか?
吉沢 7月からです。まだここから1年くらい続いていくと思うと、未知すぎて想像がつかないです。
林 そういう点も含めて、やっぱり大河ドラマは特別なものですよね。私もいろいろなドラマに原作をお渡ししていますが、『西郷どん』でつくづくそう感じました。ただの原作者の私まで、いろいろなイベントや特番、それこそ『紅白歌合戦』の審査員にも駆り出されましたから。鹿児島へ行くと“大河作家”として特別扱いで、もう大変。今もサツマイモを送ってくださるんですよ。渋沢栄一の出身地は確か、埼玉の深谷?
吉沢 はい。深谷ねぎをたくさんいただくかもしれませんね(笑)。
林 大河は主役を囲む人たちもすごい俳優さんばかりだから、顔合わせも壮観でした。主役級の俳優さんたちが次々と挨拶して、最後に主役のかたが抱負を述べる。あれを20代でやるなんて、相当緊張しますよね?
吉沢 今回は全体の顔合わせがなかったんです。そんな怖い経験をしないで済んで、逆によかったです(笑)。
林 そうでしたか。大河は撮影の規模も桁違いですよね。撮影を見学に行ったら、畑にはねぎや何かがちゃんと植えてあるし、豚や馬やヤギはいるし、川にはおたまじゃくしまで放してあって驚きました。一緒に行った脚本家さんも「こんな隅々にまでお金をかけているんだ!」と感動していました。
吉沢 半端じゃないですよね。オープンセットにしても「これ全部、セット!?」と思うくらいエグい広さです。
外出自粛期間中は毎日料理をしていたという林さん。「2時間かけて作った凝った料理を家族に15分で食べられると呆然としますね(笑)」。