“血管の老化”はさまざまな病気を招きます
心筋梗塞・狭心症、脳卒中、静脈瘤、腎臓や網膜の病気などが起こります
血液は、酸素や二酸化炭素、栄養素、ホルモン、細胞・組織で代謝された物質、老廃物の運搬、免疫、体温調節、体液の量や質の維持など、さまざまな役割を果たしています。
しかも血液は体重の1割程度の重さを占めています。その血液を全身に運ぶのが体の隅々まで張り巡らされている血管です。
血管には、動脈、静脈、毛細血管があります。
動脈は、肺で酸素を得た血液が心臓の拍動によって送り出されるルートです。心臓には大動脈と呼ばれる太い動脈があり、心臓から体中に大量の血液を運びます。大動脈は枝分かれをして、だんだん細くなり、やがて毛細血管につながります。
「この動脈の内腔に血中の脂肪がお粥状のドロドロの状態になって付着して内腔が狭くなり、動脈のしなやかさが失われるのが動脈硬化です」と横手先生。
特に心臓や脳などの動脈硬化が進むと心筋梗塞や狭心症、脳卒中(脳出血や脳梗塞)の原因になります。
加齢と生活習慣病が動脈硬化の大きな原因に
動脈硬化の最も大きな原因は加齢です。なかでも血管をしなやかにする働きがある女性ホルモンが減ってしまう閉経後は要注意。閉経後に急に血圧が上がった、脂質異常症を指摘されたという読者も多いことでしょう。
高血圧、脂質異常症は肥満、高血糖とともに動脈硬化の要因ですから、健康診断や人間ドックでの血液検査の結果をチェックしておきたいものです。
血管の構造と働き1
●動脈・静脈・毛細血管は形と機能が大きく異なる
【動脈】動脈には3つの層があり、中膜は筋肉と弾性線維からなる。その厚みは1ミリ程度。大動脈は血圧の変動を受け止めるために筋肉が少なめで軟らかく、中程度から細い動脈は血液を送り出すために筋肉が発達している。
【静脈】静脈も3つの層からなる。中膜には筋肉があるが、静脈は周囲の動脈や筋肉の動きによる圧力で血液を流すため、薄い。逆流を防ぐ弁がついているのも特徴。動脈よりも直径は大きいが扁平で、血管壁の厚さは0.5ミリほど。
【毛細血管】動脈と静脈は細胞が集まってできた層の中心部の空洞を血液が流れるが、毛細血管は1個の内皮細胞の中、あるいは数個が層を作った中を血液が通る。血管壁の厚さは1マイクロメートルとごく薄く、物質を通しやすい。
血液を流す力が弱い静脈では血栓やコブが心配
動脈を通ってきた血液が毛細血管を経て心臓に戻るために通るのが静脈です。動脈が心臓の拍動と血管壁の筋肉によって血液を押し出すのに対し、静脈は名前のとおり、静かに血液を流します。
その内腔には動脈のように血液の圧力がかからないため、動脈に比べると平たく、血管壁が薄い構造になっています。血管壁には筋肉も少ないのです。「その分、血液が滞りやすく、血栓やコブ(瘤)ができやすくなるのです」と横手先生。
肥満によって重力がかかる、出産、便秘や痔などでいきむという状態が続くと、下肢にたまった静脈血が滞って静脈瘤ができやすくなります。
また、「中年以上の女性で肥満気味の人は、手術後や座りっぱなしの姿勢などで下肢を動かさないことによって深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群のリスクが高くなります。この静脈にできた血栓が肺動脈に届き、そこで詰まると肺塞栓症で死亡する危険もあります」。
血管の構造と働き2
●動脈と静脈は連携して働く
筋肉が動いてかかる圧力や内臓の動きも静脈血の流れを作る。静脈血の停滞による下肢のむくみやコブは、足や脚を動かし、静脈に筋肉の圧力を伝えて血流を促進させることが予防になる。
静脈自体には拍動がなく、文字どおり血液が静かに流れる血管だが、近くの動脈の動きによる圧力を血液を動かす推進力にしている。