京焼作家の年始め。三浦竹泉家のお正月
新しくなったギャラリー内にある知新棚(ちしんだな)の上に金襴手 牛絵 茶碗と宋窯白瓷写 平棗、掛物は山本紅雲筆 紅梅絵、器はともに当代竹泉造。京焼の窯元として5代目となる三浦竹泉氏。伝統的な作風に独自の意匠を加えて、常に使い易い品を求め、めざしてきました。五条坂の窯場に新しくギャラリーを開き、ご家族揃って新出発のお正月。めでたい春の到来を待ち望みます。
一家で囲む新春の席
五条坂にある昔のままの佇まいの三浦家。お正月はお約束も多く、訪問客が絶えませんが、まずは家族で神仏にごあいさつした後、「祗園土井」さんの毎年変わらぬお心尽くしの、京都らしいおせちを囲みます。
中央の尺皿、萬暦赤絵写鳳龍文大皿(4代竹泉造)には、車海老艶煮、あなご鳴門巻き、数の子土佐漬け、イクラ醤油漬け(柚子釜)、くわいうま煮、たけのこ土佐煮、海老いもけしの実揚げ、田作り、黒豆艶煮、菜の花浸し、京にんじん、うま煮、堀川ごぼうなどが彩りよく盛りつけられています。「大皿以外の器は毎年変わります」と奥さま。2月末までいろいろなお正月の予定が入っていて、忙しい毎日。
おせちの後は新席立礼の間で
家族水入らずのお茶会を
京都伝統陶芸家協会会長を務めるとともに、日本煎茶工芸展の審査員もしている三浦竹泉氏。大学時代から、ご夫妻でお茶を楽しんできました。今から18年前、ご長男の直人氏を亡くした後も、多くの展覧会を開催し、2020年も2回の個展を開きました。竹泉家の伝統的作風を生かしたうえで、常に美しく、新しく、使い易い、楽しい作品を作り続けています。
紫雲山光明寺前で、ご一家勢揃い。「この寺にまいりますと、昔の先祖たちが作った品や残された資料がわが家の歴史を語ってくれ、多くを教えてくれます」。奥さまの孝子さんの心強い応援もあり、直人氏の妻であるみどりさんは、京焼の勉強のため、義父の5代竹泉氏に弟子入り。2020年、初めて作品のお披露目をすることになっていましたが、新型コロナウイルス流行のため、催しは一旦延期となりました。今は2021年5月の初個展に向かって気分一新、家族の応援を受けて制作に励む日々です。
年間を通して楽しめる茶碗は、左より、金襴手白金襴手 雪輪文、祥瑞金襴手 柳橋絵、色絵 緑松図、安南手 蜻蛉絵、赤瓷金襴手 宝尽絵、色絵 松 亀甲文。正月、三浦家のいちばん大切な行事は、一族をささえ続けたご先祖のお墓まいりです。ご家族一同で光明寺にあるお墓に詣でます。その後、ご自宅に新しくできたギャラリーの立礼席で、新たに作られた今年の干支のお茶碗を使い、ご家族での正月のひとときです。代を受け継ぐみどりさんへの、やさしい心遣いが伝わるお茶会でした。
お正月にまず一服を楽しむ「大福茶」。昔から三浦家でのお祝いには欠かせない。汲み出し碗は初代竹泉写染付墨はじき牡丹絵茶碗みどり造。お雑煮は合わせ味噌仕立てが三浦家の味。丸餅と頭いも、大根と京にんじん、そして上からたっぷりと糸花かつおがかかる。新規オープンしたギャラリーでお茶を楽しむご一家。