煎茶席は正月用道具一式が並べられた6畳の客間。花は、南蛮花器に白椿と梅。中央に当代竹泉造の色絵松香炉、松文透銀火舎。初代竹泉造の涼炉は白泥三峰炉、炉台は色絵高欄八角、湯沸は白泥ぼうぶら。棚は蓬莱棚、茶入は祥瑞写松竹梅絵、金襴手福寿文茶碗は、厚さ、重さ、形がすべて同寸同量が原則といわれている。なお、正面床の間には1760(宝暦10)年の「梅須遜雪」(高遊外売茶翁筆)。南側障子越しに、新席立礼の間へと続く。新年を寿ぐ煎茶席
初代 竹泉が五条坂に窯を構えたのは1883年。ヨーロッパの色彩を磁器に応用するなど進取の意に富んだ人物で、京焼の改良に貢献し、文人との交流も盛んでした。5代を受け継いだ当代は、ご夫妻揃って煎茶道を楽しんでいます。
脇室に飾られた「文房具飾一式」。染付日の出文磁硯、硯屏は赤絵昇龍文磁盤、ともに当代竹泉造。筆架は3代竹泉造の黄磁釉稚龍型。墨床は交趾釉長角、4代竹泉造。白磁 花水滴はみどり造。親しい友人を招いて楽しむ
別室には文房具揃を飾りつけて
「お正月の休暇の間は、昔からの友人たちを招いて、お茶を楽しむのが毎年の決まりです」。料理上手な奥さまのお得意は、お手伝いのかたたちも加わっての賑やかな集いです。昔と比べると、お手伝いのかたも職人さんも減りましたが、この家らしいお振舞いは相変わらず、賑やかで明るい奥さまの元気なお声が場を盛り上げます。
金襴手福寿文茶碗は当代竹泉造。お茶会のお菓子は黒砂糖味のきんとん。御製「柏屋光貞」。祥瑞写輪花縁鉢(4代竹泉造)に盛られている。新しい年のお客さまに楽しんでいただくおもてなしは、煎茶精神を大成した僧侶として知られる売茶翁の書で迎えられました。
「梅須遜雪 三分白雪 亦輸梅一段香」。みずみずしい梅の香りが感じられるようです。
文房具飾の会記を拝見していると、水滴に“みどり造”の名が、代々の竹泉の名前の中に、ひそやかに光って見えました。
「今年はよい年でありますように」。さりげなく、やさしい心が伝わる煎茶会でした。
お客さまのご準備をすすめる奥さま。「和気あいあいと過ごしていただけるように掛け軸と花を考えています」。お客さまが多い家をご結婚後六十余年、守り続けている。