ミュージカルの極意“心情に合った音楽に身を委ねる”
2017年の日本初演で、知人が『パレード』というタイトルに惹かれ観劇したところ、楽しさとは正反対の物語に驚きつつも「セリフ劇だと激しすぎるだろうけど、音楽に包まれると、こうして表現できるんですね」と仰ったんです。
それほど音楽の果たす役割が大きいんです。ジェイソン・ロバート・ブラウンという素晴らしい作曲家による音楽は、すごく心情とマッチしていて、演じ手が音に身を委ねるだけで、すっとその状況に入ることができます。
例えば、不安な感情は、あえて違う曲調の音楽でギクシャクした空気を生み出し、観客に違和感をもたらすことで表現する。
音符がまるでト書きのように語っているので、稽古では、台本に加え譜面をも深く読み込み、作者の意図を探る作業を続けています。
本作は実在の人物の冤罪事件を描いた作品です。人は一つ間違えば、罪人に仕立て上げられてしまう。主人公のレオ・フランクはいわゆるマイノリティだったので、いっそう悲劇的な事件となりました。
大衆は、強い発言力を持つ者に容易に扇動されてしまうものです。上演して感じたのは、事件が起こった100年前も今も、世の中はほとんど変わっていないということ。出演者以上にお客さまがそれを実感なさっているのを舞台上で感じていました。
奇しくも初演時同様、アメリカ大統領選直後の上演。コロナ禍によって格差の問題もクローズアップされているので、よりリアルに、身近に、この作品をご覧いただけると思います。
石丸幹二(いしまる かんじ)
1965年、愛媛県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。90年に劇団四季『オペラ座の怪人』のラウル役でデビュー。2007年12月に退団。現在は映像、音楽に活動の幅を広げ、活躍している。20年10月にデビュー30周年記念アルバム『The Best』『Duets』をソニーミュージックより発売。
ミュージカル『パレード』
20世紀初頭に実際にあった冤罪事件を題材に夫婦の愛を描いた作品。白人少女強姦殺人事件の容疑者としてユダヤ人が捕まり、その妻は夫の無罪を訴えるが、人種間の妬み、憎しみが思わぬ方向へと導いていく。
脚本はピューリッツァー賞受賞作家のアルフレッド・ウーリー、作詞・作曲はジェイソン・ロバート・ブラウンが手がけ、1999年にトニー賞で最優秀作詞作曲賞、最優秀脚本賞を受賞。日本では2017年に森 新太郎の演出で上演し絶賛され、待望の再演が実現した。
東京芸術劇場 プレイハウス
※この情報は、掲載号の発売当時のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。2021年1月15日~31日
SS席1万5000円ほか
ホリプロチケットセンター:03(3490)4949
公式URL:
https://horipro-stage.jp/stage/parade2021/※大阪、愛知、富山公演あり
出演/石丸幹二、堀内敬子、岡本健一、武田真治ほか
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/山下シオン 撮影/石田 航 ヘア&メイク/中島康平 スタイリング/土田拓郎 衣装協力/ジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン)
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。