書・文=中村桂子(生命誌研究者)
『堤中納言物語』に、平安時代「蟲愛づる姫君」と呼ばれるお姫様がいらっしゃったとあります。
きれいなチョウではなく毛虫を可愛がるので、大人たちが汚いからおやめなさいと止めます。
すると「よく見て下さい。この小さな体で一生懸命生きています。可愛いでしょ。見かけでなく本質を見ましょう」とおっしゃったのです。素敵なお姫様ですね。
アリやタンポポなど身近にある小さな生きものの懸命に生きている姿を見つめると生きることの愛しさが見えてきます。
愛づる心を持つ人こそ本当に美しい人と言えるのではないでしょうか。
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。