多くの情報が注意力を浪費し、自分の内面に気づけなくなる
なぜ、現代人の幸せ力は低下しているのでしょうか。要因の一つに、多すぎる情報に振り回されて自分への関心がおろそかになっている状況があります。スマホが手放せない、SNSが気になってしかたがない、など思い当たるかたも多いのではないでしょうか。
外からの情報が多いとそれだけ注意力を使うことになります。その情報が不必要だったり不正確だったりしたらまさに浪費。人が使える注意力(注意資源)の総量は決まっているので、肝心の自分のために使う注意力は残りません。また、休日も仕事のことで頭がいっぱい、家事と介護で一日が終わってしまうなどの状況も注意資源を使い切ることにつながります。さらにここに、他人からの評価や大勢の中での立ち位置を気にする、人との比較で自分の価値を判断するなど日本人にありがちな特性が重なってきます。
自分が本当は何をしたいのか、何に価値を置いているのかは、自分を見つめる中で見えてくるものです。その時間を持たずに、周囲に同調することや他人からの評価を上げることに奮闘し続けると脳は疲弊し、自律神経失調症と総称されるさまざまな症状が表れやすくなります。
まずは生活環境をシンプルに。そして呼吸瞑想をやってみる
では、どうしたらいいのでしょうか。
私がおすすめするのは、情報のデトックス。たとえば1日のうち2時間はスマホから離れる、スマホを見る時間を1時間のうち10分だけに減らす、などで必要のない情報をシャットアウトするのです。
「物」も視覚に入る情報の一種です。余計な物を減らすだけで脳のフル稼働を緩められます。部屋を片づける、衝動買いの癖をやめるなど、身の回りをできるだけシンプルに整える環境づくりはマインドフルネスの第一歩になります。ちなみに、がらんとして広いことを意味する「がらんどう」という言葉は、寺院の建物(伽藍・がらん)が不必要な物は何もない空間であることが語源です。
ではさっそく、マインドフルネスの基本「呼吸瞑想」をやってみましょう(解説は
4ページ目)。呼吸をありのままに観察する練習が、自分の内面に気づくきっかけとなります。ゴールはありません。自分自身を見つめようという気持ちになること、その習慣を続けることこそがマインドフルネスだからです。
今月のキーワード「マインドフルネス」1970年代にヨガや瞑想法のプログラムとしてアメリカの医療現場でメンタルヘルスや疼痛緩和に用いられた。2000年代にGoogle社などのIT企業でパフォーマンス向上のために活用し世界中に広まった。ルーツは、お釈迦様の時代の仏教瞑想や禅の教えにあるとされる。