【コラム】川野医師の診察室から
ケース(1)
仕事のストレスによる腹痛やめまいが、毎日の呼吸瞑想で改善
→自分をケアしていないことに気づけたのがポイントでした会社員のA子さん(52歳)は、腹痛とめまいと頭痛を繰り返し、自律神経失調症と診断されて受診してきました。3種類の薬を半年飲み続けても症状が治まらないのです。
話を聞くと体力も気持ちも時間も仕事に費やし、自らのストレスに気づくことさえできていません。まさに情報過多による疲労が考えられました。
朝と晩の呼吸瞑想をすすめたところ、3か月ほど経ったある日、明るい表情で診察に来られ、「休暇を取って温泉に行ってきた」というのです。情報からリトリート(回避)する時間をつくったことで注意資源の浪費が抑えられ、心身が疲れていることに気づく余裕が出てきたのです。回復のポイントは、温泉の成分ではなく「温泉に行こう」という気持ちになれたことでした。
それ以来、ストレスが溜まってきたと感じると休みを取って小旅行に出かけているA子さん。自分をケアする習慣ができると症状も自然に治まり、薬も必要なくなっていきました。
ケース(2)
介護による過労でダウン。自然の中で療養し元気になりました
→心が空っぽになって、新しい視点が生まれたのですねめまいで倒れ、救急車で運ばれた先で「ストレスが原因」といわれたB子さん(56歳)。診察室での訴えといえば、認知症の母親の介護の大変さと自立できない娘への不満ばかり。介護サービスも一切受けず家事も介護も一人で背負い、過労が明らかでした。
めまいはますますひどくなり限界を感じたB子さんは、母親の世話を妹に頼み、高原の療養所に入院することに。そして半月後、見違えるほどすっきりした顔で戻ってきたB子さんは、驚いたことに自ら「マインドフルネスをやってみたい」と希望されたのです。
心が一つのことに占領されていると、有益な情報がすぐ近くにあってもそれに気づくことができません。介護からリトリートして自然の中で過ごしたB子さんの心に余白が生まれたことで、新しい世界が目に入るようになり、行動を起こせるまでになったのです。
介護サービスを積極的に利用しはじめると体も気持ちも楽になり、いつのまにかめまいは治っていました。
*実際の症例をもとに内容を変更して掲載しています。