実践・マインドフルネス「呼吸瞑想」
マインドフルネスの最も基本的な練習法「呼吸瞑想」を紹介します。動きを伴わないので時と場所を選ばず、習慣化しやすいのが特徴です。数か月続けたら、自分の中で何かが変わったと気づくかもしれません。
【基本】自分の呼吸をあるがままに観察する
「呼吸瞑想」ではあるがままの呼吸に意識を集中します。肺は唯一、自分の意思で動かすことのできる内臓です。コントロール可能な呼吸を、あえてコントロールせず観察することが、ありのままを受け止める練習になります。
(1)図のように椅子に腰かけます(立って行う場合、両手は自然に体の脇にたらすか腕組みをしてもよい)。
基本の姿勢・目は軽く閉じるか、数メートル先の床をぼんやり見る半眼にする。
・頭のてっぺんから天に向かって一本の糸で吊り上げられているイメージで背筋を軽く伸ばす。
・鼻から吸って鼻から吐く鼻呼吸。やりにくい場合は口呼吸でもよい。
・手のひらを上に向けて膝の上に軽く置く。
・へそ下あたりで両腕を軽く組んでもよい。
・両足を少し開く。
(2)1、2回大きく深呼吸をします。新鮮な空気を体いっぱいに吸い込み、ゆっくりと吐き出すイメージです。
(3)自然な呼吸を続けながら、ありのままの呼吸に意識を向けます。空気が鼻(もしくは口)から「入っていった、出ていった」あるいは、体が「ふくらんだ、しぼんだ」と観察しながら呼吸の状況を感じ取ります。
できれば1日5分を2回、まずは2か月続けてみましょう。「朝晩の歯磨きの後に」など、毎日必ず行うことと結びつけると習慣化しやすくなります。
動画を見ながら「呼吸瞑想」を行ってみましょう
下の動画では川野さんの映像付き音声を聞くことができます。
【応用】公園や野山など自然の中で行う
自然の中に身を置いて呼吸瞑想を行ってみましょう。公園や、野山や海辺のベンチなどふだんと違う場所で行うと、新鮮な気づきがあります。
戸外では、鳥の鳴き声、風や水の音、子どもたちの遊ぶ声などが聞こえ、雲が流れ、木々が風に揺れる様子も見えるでしょう。無理に呼吸だけに集中しようと構えず、周囲の観察と呼吸瞑想を交互に繰り返すくらいの余裕でよいのです。「鳥が鳴いている。雲が流れている。……では呼吸に意識を戻そう」といった具合です。これは注意を交互に切り替える訓練にもなります。
最初は耳障りに感じる雑音も、やがて「音は音、それ以外の何でもない」と素直に聞けるようになります。良い・悪いの価値判断を“手放す”こともマインドフルネスの大事な要素です。
ワンポイントアドバイス
Q 違うことを考えてしまいます。
A 気づいたら呼吸に戻りましょう。人間の集中力などそう長く続くものではありません。注意が逸れて当たり前。大事なのはそれを否定せず、気づいた自分を褒めてあげること。
気づきは集中に戻るチャンスだからです。「人間なんてそんなもの」とありのままを受け入れて、呼吸に注意を戻す――。その繰り返しの中でマインドフルネスは身についていきます。
撮影(川野さん)/鍋島徳恭 写真/アフロ 取材・文/浅原須美 イラスト/井上明香