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京都「萬亀楼(まんかめろう)」で堪能する、式庖丁と有職料理の雅な世界

2021.01.25

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心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる 第3回(全17回) この時期の京都は観光客も少なく、心静かに本来の魅力を堪能できる絶好の季節です。京都を代表する料亭が満を持して開催する“料亭美術館”、精緻な“手業の美”に出会える美術館やショップ、そして“冬の美味”を味わう食事処──。今、注目の京都のさまざまな美の形が、ここにあります。前回の記事はこちら>>

第1部 名品を愛でる“料亭美術館”


(1)常盤貴子さんが訪ねる京都「菊乃井本店」
(2)「瓢亭本店」ご主人が語る。歴代の樂、永樂のうつわ話

【料亭美術館3】萬亀楼〈西陣〉


訪ねる人・笹岡隆甫さん(華道「未生流笹岡」家元)


10代目主人小西将清さんと笹岡隆甫さん
笹岡隆甫(ささおか・りゅうほ)さん
華道「未生流笹岡」の3代家元。伝統的な華道の表現にとどまらず、狂言やミュージカルなどの舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、国内外でパフォーマンスを披露。テレビ、雑誌、新聞等での幅広い活動も注目を集める。

平安中期に始まった宮中の食の儀式だった「生間流」の式庖丁を堪能する笹岡隆甫さん。明治期に桂宮家が絶家したことに伴い、「萬亀楼」の先々代が継ぐことを許され、今は10代目主人、小西将清さんが家元を務める。

式庖丁と有職料理の雅な世界を堪能する


織物の街、西陣の一角にある500坪ほどの敷地に佇む「萬亀楼」は、造り酒屋として1722(享保7)年に創業し、料亭となってからおよそ300年。明治期に御所ゆかりの「生間流」を継承し、家元として式庖丁や有職料理を今に伝えています。

生間流の道具一式
生間流の道具一式。まな箸は螺鈿や鮫皮の見事な細工が施され、織田家の家紋入りもある。

一子相伝、300年の歴史を今に受け継いで


今回の特別食事会は生間流の30代家元、小西将清さんの式庖丁を拝見することから始まります。式庖丁は平安時代に生まれた宮中の食の儀式で、まな板にのせた魚や鳥を、直接手を触れずに庖丁刃とまな箸で切り分け、瑞祥というめでたい形を表すもの。

「一子相伝で守っておられる貴重で厳格な流儀ですね。烏帽子狩衣姿で庖丁刃とまな箸を両手に持つ所作は、静と動があって絵巻物を見るような美しさです」と話す華道未生流笹岡の家元、笹岡隆甫さん。

生間流料理伝書
徳川家光が上洛したときに二条城で催された大饗宴の献立を綴った「生間流料理伝書」。真ん中あたりに、庖丁人として大勢の手代の指揮をとった当時の家元の生間正右衛門の名前を見ることができる。絵巻には式三献に始まり、三宝に盛った75膳の料理が描かれ、この饗宴が5日間にわたって行われたと記されている。

巻物
長さが10メートルに及ぶ巻物に見入る笹岡さん。丹念に描かれた三宝に盛った料理の中には今の時代にはない料理も多く、食べきれないほどの量と華美な演出に驚かされる。

式庖丁の後に披露される巻物や書物には、大きな饗宴を記録したものや献立が細かく記され、権力の象徴ともいえる往時の料理や、それを支えた生間流の存在を知ることができます。

文書
道具とともに保管されている文書は式庖丁の教本だけでも45冊あり、数百にも及ぶ魚や鳥の捌き方の形が克明に記されている。現代では「神巌の鯉」や「藻隠れの鯛」といった華やかで見栄えのする式庖丁が多く、神社の奉納儀式など、限られた場でしか見ることができない。

床の間の花
床の間に飾る花は、萬亀楼の庭で育てられた白玉椿。店に飾る花の準備や庭の手入れは当代主人自らが行い、その日の趣向に合った花やしつらいが施される。
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