飲み込む機能を高める嚥下トレーニング外来
近年、多くの病院に嚥下外来あるいは摂食嚥下外来が設けられています。これらの外来では嚥下機能がかなり落ちた人を対象に、医師が内視鏡などを使って嚥下機能を調べ、言語聴覚士が機能に応じた訓練や食事の調整を行います。
一方、浦長瀬先生が担当する嚥下トレーニング外来では、訓練に対して意欲が高く、理解力がある嚥下障害患者を対象に、意識的に嚥下する訓練を指導しています。「自立して生活できていて、自分でトレーニングできる人が対象です」と浦長瀬先生。
嚥下トレーニング外来ではアンケート記入や問診の後、鼻から内視鏡を入れ、鼻や喉に腫瘍などの異変がないかをチェックします。そして、内視鏡を入れたまま色のついた水を飲み、飲み込みの機能をみます。
「通常の嚥下外来とは異なり、患者さんに自分の喉の画像を見てもらいながら、動画やアニメーションで飲み込みの仕組みを説明して、
前ページにあるようなトレーニングもしてもらいます」。
その後は1か月に1回程度の割合で内視鏡を使っての評価や嚥下の指導を続けます。なお、この外来は、嚥下トレーニングの研究開発も目的の1つになっています。
浦長瀬先生は嚥下トレーニング協会代表理事として、一般向けの飲み込みの指導や、指導できる講師の養成を行っています。
一般向けの指導は、東京では協会が開催する教室で、また、神戸ではカルチャーセンターの講座の一部として実施されています。
●神鋼記念病院TEL:078(261)6711
嚥下トレーニング外来の診察日は木曜午前、限定6人、完全予約制で紹介状が必要。2021年2月末までは新型コロナウイルス感染症の影響で休診。
●嚥下トレーニング協会URL:
http://www.enge.or.jp〔解説してくださったかた〕浦長瀬昌宏(うらながせ・あつひろ)先生神鋼記念病院 耳鼻咽喉科科長
嚥下トレーニング協会代表理事
2003年神戸大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野修了。耳鼻咽喉科専門医。09年から神鋼記念病院に勤務し、同院内の器官組織病態研究所(ENT medical lab)主任研究員として研究にも従事。15年に日本で初めての嚥下トレーニング外来を開設、17年には嚥下トレーニング協会を設立、代表となる。著書多数。紹介した訓練は浦長瀬先生の最新刊『のどを鍛えて誤嚥性肺炎を防ぐ!嚥下トレーニング1日5分で「飲みこみ力」に差がつく!』(メイツ出版)にも詳しく紹介されています。
取材・文/小島あゆみ 撮影/塩川真悟 イラスト/にれいさちこ
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。