温泉宿に泊まる際、何より楽しみなのはゆったりと、時間を気にすることなく、極上の湯に浸かる時間です。それが地上に生まれ出たままの「源泉かけ流し」の湯であればなおさらです。客室の露天風呂で、貸し切り風呂で、大浴場で、最上級の温泉が楽しめる宿をご紹介します。
羊蹄山の美を仰ぐ 全室源泉かけ流し露天風呂の贅沢
北海道・ニセコ樺山の里「楽 水山」
薄暮の時間、雪景色にやさしい灯りを落とす「楽 水山(らく すいさん)」の外観。ニセコの自然に抱かれ、心の贅沢と山海の幸を味わえる里山の湯宿。客室は離れの造りで、源泉かけ流しの露天風呂付き。「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」。『論語』の言葉から名付けられた「楽 水山」は2020年12月、北海道・ニセコエリアに開業しました。世界有数のスキーリゾートという印象とは異なり、静寂な時間に包まれながら、山、川、海、この地の自然の恵みを堪能できる湯宿です。
とりわけ蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山((ようていざん)の姿を館のどこにいても感じられることは、唯一無二の魅力。刻々と表情を変える山景の美しさに心奪われます。
それは客室で過ごす時間も同じです。平屋造りの離れが回廊で結ばれた客室は、羊蹄山を眼前に大きな窓を配し、北海道産材のぬくもりとシンプルな美が調和するスイート仕様。
リビング、ベッドルーム、露天風呂すべてで、羊蹄山に見守られながらくつろげる。山麓を染める朝焼けが美しいので早起きがおすすめ。広々とした客室露天風呂は贅沢な自家源泉のかけ流しで、茶褐色の湯に身をゆだねると、遮るものがない開放的な眺めに心も体も解き放たれます。
客室露天風呂は源泉かけ流し。少し熱めの湯が溢れる湯船は、写真の石のほか、青森ヒバ、陶器など、客室によりタイプが異なるが、いずれもゆったりとした広さと絶景が嬉しい。食事は「ゆきあい亭」で。山海の幸が豊富な土地柄ゆえ、生産者からじかに仕入れる食材に発想を得て紡ぐコース料理が楽しめます。
いくつもの皿で構成される前菜。長期熟成し甘さを増したじゃがいも「五四〇」と真鱈のコロッケ、テリーヌのように仕立てたニセコ野菜の煮浸し、活あわびの肝焼きなど、まさに枠にとらわれない多彩な内容。料理とワインのペアリングも楽しめる。たらば蟹は炭火焼き、蒸し、揚げと3つの楽しみ方で出される。メインダイニングのほか、鉄板焼き、すしと天ぷらが楽しめるカウンターも用意されている。あえてメニューは固定せず、和洋の枠にもとらわれず、その日いちばんおいしいものを、印象に残るひと皿へと仕上げるスタイルが特徴的です。
静寂、眺望、源泉、そして旬味にふれ、心満ちる時間に癒やされる新・湯宿です。
Information
楽 水山(らく すいさん)
北海道虻田郡倶知安町字樺山119-1
撮影/大泉省吾 取材・文/小西由稀
『家庭画報』2021年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。