華も実力も兼ね備えた41歳。今や“ミュージカル界のプリンス”どころか、日本のミュージカル界を牽引する一人だ。井上芳雄さんが、劇作家・井上ひさしの原点と言われる作品『日本人のへそ』に挑みます。1969年初演の実質的な劇作家デビュー作で、患者たちが吃音治療の一環として、東北から上京して裸一貫でのし上がっていくストリッパー・ヘレン天津の半生を描くミュージカルを演じ始めるが……という物語。井上ひさし最後の書き下ろし戯曲『組曲虐殺』でも主演を務めた芳雄さんに、井上作品への思いなどを伺いました。
――芳雄さんは、こまつ座が2011年に井上ひさし追悼公演として上演した『日本人のへそ』を観劇されたそうですね。どんな印象だったでしょう?「びっくりしました。井上先生の処女作というのは、どういうものなんだろう?と思って観に行ったら、奇想天外というか、ぶっ飛んだ話で。『組曲虐殺』をやらせていただいた後だったので、いい意味で予想を裏切られたような感覚があって、処女作というのはこんなにもエネルギーがあるものなんだ!と圧倒されました」
――確かに、小林多喜二を題材にした『組曲虐殺』とは随分作風が違います。歌に踊りにどんでん返しと、盛りだくさんの趣向で怒涛の展開を見せていく作品になっていて。「劇の構造も特殊で、お客さんを翻弄するような話ですよね。言葉も過剰なほど詰まっていて、これもまた趣向の一つかなと思うような長台詞もあったりして。僕もまったく違う役柄をいくつも演じることになるので、それをこの作品をよくご存じの栗山さんがどう演出されるのか、とても楽しみにしています」