エンターテインメント

井上芳雄さんが『日本人のへそ』に出演。劇作家・井上ひさしの原点に挑む

2021.01.26

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――演出家の栗山民也さんは、芳雄さんに「井上さんの最初の作品と最後の作品をやれるのは面白いんじゃない?」とおっしゃったとか?

「はい。栗山さんは以前から“自分がいちばん好きな井上さんの戯曲は『日本人のへそ』だ”“処女作にはその作家のすべてが表れているというだけあって、『組曲虐殺』に通じるところもある”とおっしゃっていて、もともと興味があったところにその言葉をいただいたので、すごく響きました。井上先生の遺作となった『組曲虐殺』をやらせていただいたことは、僕にとってとても大きなこと。それとはまた全然違うエネルギーを持った若い頃の作品も経験できるなんて、本当にありがたいです」

――『組曲虐殺』は、芳雄さんの人生を変えた作品だとか。


「それくらい大きな影響を受けました。多喜二の貧しい人や社会を支えている人たちへの眼差しや、貧しい人を生み出してしまう社会構造への疑問に、とても共感して。思い返してみると、自分が両親から教わってきたことと重なるんです。最初に『組曲虐殺』のお話を伺ったときは、なんでこの役を僕に?と思ったんですが、素地はあったんでしょうね。僕が役者の道を選んだのも、ただミュージカルがやりたかったわけじゃなく、人々の声を舞台上で代弁する、表現することに惹かれた部分があったんだなと気がつきました。『組曲虐殺』に出合ったことで、自分が大事にしたいこと、伝えていきたいことが、明確になった気がします」

――そんな芳雄さんにとっての井上作品の魅力は?

「やらせていただくたびに、人生を生きていくうえで必要な言葉や考え方を教わっているなと感じます。しかも、演じることで1度自分の中に入った人物は、なかなか抜けない。それだけ濃い演劇体験なんです。去年、世田谷文学館の『井上ひさし展』を見に行って、先生は作品の題材について全方向から調べて、人間の嫌な面や、ご自分とは異なる意見や考え方まで踏まえたうえで、こうなればいいなという人間の夢、ユートピアを描こうとしていたのだなと改めて感じました。ユートピアだけに、実現は無理かもしれないけれど、劇場にはそれがある。先生はそういう思いで書かれていたと思うし、そこには共感しかありません」


東北から上京して、クリーニング店で仕事を始め、流れ流れて浅草でストリッパーとなるヘレン天津役は、芳雄さんと舞台『陥没』でも共演した小池栄子さんが務める。
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