血のつながりを超えた本当の家族愛
初共演とは思えない距離の近さを感じさせるお二人。特に綾野さんの舘さんへの愛は、言葉の一つ一つから溢れ出ている。
「舘さんは自分にとって最愛の人なので、親父の笑顔を一秒でも長く見ていたいという思いがありました。撮影期間中は舘さんのことをずっと見ていました。
だから自分が好きな舘さんと山本の親父がしっかりとシンクロしていたので、山本と芝居していたというより、綾野 剛も山本と共存していたと思います。今日こうしてお目にかかっても、自分が舘さんに惚れているのがわかる。血流もよくなるし。恋ってこういうことなんですね」
「“親父”と一緒にいられる、そんな幸せを感じる毎日でした」── 綾野 剛
今回は家族をテーマにした映画だが、完成した作品に、お二人はどんな感想を持ったのだろうか。
「自分の人生に、集大成という言葉が生まれました。登場している家族みんながたまらなく愛おしくて、エンドロールを見たときにこみ上げてくる気持ちが抑えられなかった。
自分にとって最愛の人の背中を追い続けると、こんな生き方ができるという発見があったんです。それは舘さんだったから。愛されているなって作品の中で思い続けられたから、山本は一度も目が死ななかったですし、生き続け、幸せでした」と綾野さん。
その目力に魅了された舘さんも父親らしい包容力で応えた。
「綾野君が僕を見てくれていたことには気づいていませんでした(笑)。とにかく3つの時代を生きた綾野 剛という俳優さんが素晴らしかった。本当に、自然に山本という役を生きていたと思います。そんな彼からは多くを学ばせてもらいました。
家族って血のつながりだけではなく、帰る場所だと僕は思いますが、そういう意味で本当の家族というものを描けた作品だと思います」
舘 ひろし/たち・ひろし
1950年、愛知県出身。76年に東映映画『暴力教室』で俳優デビュー。36歳で主演したNTV『あぶない刑事』で大ブレイク。2007年TBS『パパとムスメの7日間』の主演など、アクションからコメディまで幅広い演技力で数々の作品に出演。2020年旭日小綬章受章。
綾野 剛/あやの・ごう
1982年、岐阜県出身。2003年に俳優デビューし、NHK連続テレビ小説『カーネーション』でヒロインの恋の相手役を演じて脚光を浴び、以来、出演作、主演作が途切れることがない。14年に主演作『そこのみにて光輝く』でキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞など、これまでに数多くの賞を受賞。
映画『ヤクザと家族 The Family』
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会 配給:スターサンズ/KADOKAWA1999年、2005年、2019年の3つの時代を生きた一人の男とその「家族・ファミリー」を描いた壮大なヒューマンストーリー。主人公の山本賢治は、チンピラ時代にヤクザに殺されそうになり、柴咲組組長に救われ、父子の契りを結ぶ。時代とともに変化する世の中で、生きづらくなるヤクザが「組織・ファミリー」と「愛する家族」の間で揺れ動く。日本アカデミー賞6冠を制した『新聞記者』のスタッフが手がけた期待の作品である。
監督・脚本/藤井道人
音楽/岩代太郎
公式サイトは
こちら>>2021年1月29日(金)全国公開 撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン スタイリング/申谷弘美(綾野さん)、中村抽里(舘さん) ヘア&メイク/石邑麻由(綾野さん)、岩淵賀世(舘さん)
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。