福島市の花見山公園では4月~5月にかけてハナモモが咲き誇る。(写真・武藤 守/アフロ)三千歳に一度 花咲き実なるこの木の 仙薬となるぞ 不思議なる
選・文=大倉源次郎(大倉流小鼓方十六世宗家)
三千年に一度開き不老不死の仙薬の実と成る西王母の桃の伝説は、能楽にも取り入れられています。
疫病、と書いてエキビョウは流行病。ヤクビョウは心の病。人類永遠のテーマとも言える不老不死の世界は、本当の理想世界なのでしょうか。
生まれ変わり死に変わりして現世に生まれ、魂の修行をするアミニズム的な考え方を見直せば、死に対する恐れは薄らぎ、心の平穏が訪れます。
仙薬を服する皇帝の絵は経年変化でくすんで過去の夢の世界となったのに対し、毎年、桃は美しい花と実で人々の目と味覚と心を楽しませています。
『家庭画報』2021年3月号掲載。
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