即興は、人生そのもの
還暦を迎える当日、3月25日のサントリーホール公演を始まりに、ソロで全国津々浦々を巡る小曽根 真。「60歳になるまで支えてくれたファンのみなさんへのお礼参り」だという。ジャズ・ピアニストの小曽根 真。彼には一つところに留まるという選択肢はない。40代でクラシックに挑み、今なおボーダーレスな活動を続ける。
「楽しくても、同じところにいたら飽きてしまう。できないものに向かうことを、子どもの頃から何歳になっても続け、心から楽しんでいるんです。そうして起きる僕の生きるエネルギーを共有し、豊かな気持ちになってそれぞれの場所に帰る。これこそが舞台芸術の存在意義だと思うのです」
ステージでピアノと戯れる若々しい姿を思うと驚かずにいられないが、2021年で60歳。その節目を記念し、ジャズとクラシックによる全国ツアーを行う。
「今、もっと自分の言葉で音楽を話していいところに入ったと感じていて。“素っ裸”になるつもりで臨みます」
存分に弾き込んでいくけれど、ステージでは全部壊し、創り直す。
「コロナ禍で永遠に続くものはないという現実をつきつけられた。それでも人は知恵を絞り、柔軟に必死に生きるものです。即興って、次の瞬間何が起きるかわからない中、みんなで音を創るということ。人生そのものですよね」
ジャズに宿る楽観的エネルギーをぜひ受け取ってほしいと、力強く語った。
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〔公演情報〕
小曽根真60th Birthday Solo OZONE60 Classic × Jazz
【2021年】●3月25日 東京 サントリーホール
●3月27日 名古屋 愛知県芸術劇場コンサートホール
●3月28日 秋田 アトリオン音楽ホール
●4月3日 大阪 ザ・シンフォニーホール
●5月22日 福岡 シンフォニーホール
ほか、全国各地にて公演予定
公演の詳細:
https://makotoozone.com/※この情報は、掲載号の発売当時のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。
〔アルバム〕
小曽根真『OZONE 60』
UCCJ-2190/1 4400円(税込み) Universal Music全国ツアーで取り上げる楽曲を中心に収録した、60歳記念ソロアルバム。ジャズの自作曲はもちろん、プロコフィエフやラヴェルでも小曽根らしいアドリブが炸裂。ヤマハとスタインウェイ&サンズのピアノを使い分けたみずみずしくふくよかなサウンドにも注目したい。
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/高坂はる香 撮影/下村一喜〈AGENCE HIRATA〉
『家庭画報』2021年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。