「本物印」の食材で最高の朝ごはん 第2回(全16回) 食は命をつくるもの。とりわけ一日の活動を始めるエネルギーを補給する朝ごはんには心も体も喜ぶものを食べたいものです。真っ当な食材・食品さえあれば、献立はごくシンプルでよい。理想の朝ごはんにふさわしい「本物印」の食材・食品を日本全国で探しました。
前回の記事はこちら>> 狐野扶実子さん(料理人・食プロデューサー)が作る、花が咲いて、種こぼれる 命めぐる畑の朝ごはん
北山農園の平垣正明さんと平垣紀子さん。真ん中は狐野扶実子さん。築100年の母屋の前にて。「受粉によって命が循環する自然の営みは、人間も植物も変わらない。普通のことだけど、すごいこと。農業を始めて、本当の意味での感謝を知りました」と語る平垣夫妻。北山農園 (静岡県・富士宮市)
富士山の麓で、自然の力に任せ、最小限の有機肥料で野菜を栽培する「北山農園」。パリで料理人として活躍していた狐野扶実子さんが訪ね、採れたての、味と香りが濃い、個性溢れる野菜をおいしくいただく料理を提案してくださいました。
おいしい食材は、虫や植物、動物が共生する土地で生まれる
縦半分に切ったズッキーニの切り口にオリーブオイルを塗り、塩をふりかけ、シェーブルチーズをのせて、オーブンで20~30分焼いた一品。こしょうをひき、レモンの皮をすりおろし、ハーブの葉や花を添えて。ある夏の日、富士山の麓の「北山農園」から、狐野扶実子さんに野菜の詰まった箱が届きました。一つ一つに名前が書かれ、丁寧に包装された数々の野菜やハーブ。日本で初めて見る、懐かしのヨーロッパの品種もありました。
「箱を開けた瞬間、野菜に対する愛情とセンスが感じられ、野菜は色と形が美しい、香りのあるアートな食材だと再確認できました」と狐野さん。翌週、北山農園を訪ね、狐野さん流の朝ごはんを披露してくださいました。
湧き水に恵まれた1万坪の畑では、平垣正明さんと妻の紀子さんが、少量多品種を露地栽培しています。
「肥料がないと、野菜は自分たちでなんとかしようと味も香りも強くなり、個性的な野菜に育ちます。全く同じ形なんてありえないんですよ」と正明さん。ここでは、野菜の根っこや花の蕾なども驚くほど美味。大根であれば、実鞘からスプラウト、花まで、野菜のすべてのライフサイクルを食材にしています。
「この畑で蝶や蜂が飛び交い、みみずやもぐらが暮らしているように、いろいろな虫や植物、動物が共生している土地で、本当においしいものができるのですね」と頷きながら、狐野さんは採れたての野菜を手に母屋のキッチンへ。シンプルな料理法でありながら、野菜の味と香りが生きた、アートのような朝ごはんが並びました。
北山農園を訪ねた狐野扶実子さんが、採れたての野菜を使って、手早くオープンオムレツとサラダの朝食を用意。地元の「青木養鶏場」の卵、「七富(ななとみ)チーズ工房」のモッツァレラチーズを使ったオムレツは、スライスしたじゃがいも、黒大根、にんじんのほか、ツルムラサキやニラ、チコリ、ナスタチウムの花、ヤブガラシやカキドオシなどをのせて。小さなプレートには21種類もの野菜とハーブが。搾りたての「いでぼく牛乳」とともに。下のフォトギャラリーから詳しくご覧ください。 Information
北山農園
静岡県富士宮市北山3192
- 「日本のどこにもない野菜を」をモットーに個性的な野菜を栽培し、主にレストランに発送。東京都の「シンプル・リトルクチーナ」、アマン東京「アルヴァ」、「傳」、「RestaurantKabi」、静岡県の「旬輝」などに提供している。
撮影/本誌・坂本正行
『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。