タサン志麻(タサン・しま)日本の調理師学校と同校のフランス校を卒業後、現地のミシュラン3つ星店での研修を経て都内フランス料理店で15年間働く。2015年フリーランスの「家政婦」として独立。確かな技術と柔軟な発想で作る料理が評判を呼び、「伝説の家政婦」に。フランス人の夫、2人の息子、2匹の猫に、2021年9月に誕生した娘が加わりますます賑やかに暮らす。火にかけるだけのシンプル煮込み
文・タサン志麻
フランスには冬に欠かせないシンプルな煮込み料理が2つあります。1つは日本でもよく知られているポトフで牛肉を使い、もう1つはポテといって豚肉を使います。どちらもたっぷりの野菜と肉をコンソメで煮込みます。
今回ご紹介するポトフはフランス語で“potau feu”と書きますが、“pot”は鍋のこと、“feu”は火の意味。火にかけた鍋というわかりやすい名前です。
料理の多くは火にかけますが、材料を鍋に入れて火にかけるだけというシンプルさが、この名前の由来なのかもしれません。
時間はかかるけれど、作るのはとっても簡単ですし、たくさんの野菜と柔らかいお肉をおなかいっぱい食べることができるので、大人も子どもも大好きな料理です。
食べ方もいろいろあり、スープと具材を別々に食べる人もいれば、スープの中に赤ワインを混ぜて飲む人もいます。
肉も野菜も大きめに切って盛り、マスタードを添える。このポトフは1食分だけを作るのはもったいないので、家にあるいちばん大きな鍋でたくさん作っておきます。そうすると、残ったポトフでいろいろなアレンジができます。
野菜を小さく切ったり、カレーなどのスパイスを加えてエスニック風にしたり、ホワイトソースをたしてシチューにしたりなどさまざま。
また、フランスではよくアッシ パルマンティエという料理に変身させます。これは学校給食のメニューにもたびたび登場しますし、冷凍食品としてもよく売られている国民的な料理です。(
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残った野菜を粗く切り、牛肉をほぐしてグラタン皿に敷き、じゃがいものピュレ、チーズをかけてオーブンでこんがり焼きます。
ポトフのアレンジ料理ですが、全く違ったものとして楽しむことができ、日持ちもするので作って冷凍し、忙しい日、料理を作りたくない日のためのストックにしてもいいと思います。
ポトフの野菜にはれんこんやごぼう、山いもなどの和野菜を使ってもおいしくできます。夏場は仕上げにトマトを加えてさっぱりとした味に。さまざまな野菜でお楽しみください。