歌舞伎の名門、成田屋・市川團十郎家。家での食事を楽しんだ故團十郎さんのために、希実子夫人は日ごと腕をふるった。芸の伝承とともに次代に伝えていく「成田屋の味」を初公開する。
愛用の名入り包丁を持つほどの魚好き
團十郎が好きだった まぐろと鯛
「鉄火丼」
とにかくまぐろ好きの團十郎さんは、鉄火丼を作るときも「づけ」にしたまぐろを、二重に重ねて盛りつけるほどだった。團十郎さんの魚好きは有名である。パリ公演のとき、友人が現地で手に入れたまぐろを、ホテルの厨房でさばいて、皆にふるまったという逸話が残る。名入りの包丁も2本持っている。
「まぐろの混ぜ寿司」
希実子夫人が蛸の混ぜ寿司をヒントに作ってみたところ好評で、團十郎さんが好きなメニューの仲間入りをした。特に好物はまぐろ。寿司屋さんでも注文するのは、もっぱらまぐろで、正月にも欠かせなかった。まぐろを塊で取り寄せ、刺し身をこしらえるほど、包丁さばきは手馴れていた。同様に鯛もまるごと一尾を手に入れ、上手に三枚におろした。
「鯛のカルパッチョ」
鯛を薄切りにするのは團十郎さんの仕事。ソースをかけ、うにを崩して混ぜ合わせていただく。「鯛茶漬け」
鯛の半身のアラからだしをとった熱々のスープを注ぐ。ごま味噌の風味が食欲をそそる。