「心を調える」秋 京都で新体験 第18回(全30回) 時代の変わり目、何かと心がざわめき、心が調(ととの)わないと感じる日々が続きます。今、私たちに必要なのは、心をからっぽにし、頭を整理する時間です。自分の心に、自分の人生に深く残る何かを求めて、日本の心の原点、京都に旅立ちます。
前回の記事はこちら>> 「おまかせ」で楽しむ、「一品料理」で遊ぶ。この秋に行きたい新・美味処
注目の新店を「おまかせ」と「一品料理」の2つのタイプに焦点を当ててご紹介します。京都ならではの洗練された和食、新味に出合える中国料理やフレンチをおまかせコースで楽しむもよし、一品料理やおばんざいを自在に組み合わせて楽しむもよし。旅のプランに合わせて選ぶ美味処で、古都の秋をご堪能ください。
凌霄(祇園)
「凌霄」の煮物椀。葛打ちした淡路産の鱧と松茸を、鱧の骨を焼いてとっただしと一番だしの合わせだしですまし仕立てに。京料理の王道の味を継承し、京の秋を象徴する一品。[おまかせコースで楽しむ]
新趣と新味を取り入れた、王道の京料理を祇園で味わう
先付の「伊勢海老の生揚げ」は、高温で素揚げしたレア状態の伊勢海老と焼きかぶを盛り合わせたもの。揚げた伊勢海老の香ばしさに、卵黄を加えたソースを添えていただく。「祇園丸山」で13年修業を重ねた後に自店を構え、その後、高台寺「十牛庵」の料理長を務めた藤原 誠さん。2022年1月、老舗が居並ぶ祇園の中心に、志新たに「凌霄」をオープンし、カウンター8席でお客さまをもてなします。
趣ある坪庭を備えたカウンターでもてなす藤原 誠さん。元お茶屋だった日本家屋を数寄屋建築の名工「中村外二工務店」の監修のもとで改装。長年携わってきた京料理の王道を軸に、それに縛られないアプローチも試み、「これまでは伝統を忠実になぞる仕事が多かったのですが、今は自分がおいしいと思う料理で季節を感じてもらい、印象を残せたら」と語ります。
目の前で仕上げる割烹ならではのライブ感を大事に、時には新しい味や盛りつけで感動を誘います。なかでも、和食と違った手法を取り入れているのが先付と焼き物。
かつてフランス料理店「ひらまつ」の厨房で体験したことをヒントに、伊勢海老は一瞬の火入れで最大のおいしさを引き出し、鴨にはふくよかな旨みの甘辛のソースが添えられます。「ちょっと遊びすぎですか?」といいつつも楽しげな藤原さん。ベテランの挑戦は始まったばかりです。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
凌霄(りょうしょう)
京都市東山区祇園町南側570-166
撮影/伊藤 信 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。