私の最高レストラン66 第7回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、家庭画報ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。
前回の記事はこちら>> 人生の節目に美味が欲しい。私の最高レストラン&このひと皿
家庭画報ゆかりの著名人、著者のかたがたに「特別な思い出がある」あるいは「特別な日に訪ねたい」最高のレストランを挙げていただき、同時に愛する「このひと皿」を教えていただきました。
「ソンブルイユ」
オマールえびのビスク
オマールえびをまるごと使った正統派の「ビスク」は、夏はジュレとともに、冬は温製で供される若月シェフのスペシャリテ。この日はキャビアやじゅん菜をトッピングして。「この味を食べてほしいというシェフの強い気持ちが伝わる逸品」(濱野昌子さん)
「ビスクやパイ包みなどは、フランス料理人として伝え続けるべき味」という「ソンブルイユ」の若月稔章シェフの言葉に濱野昌子さんも大きくうなずく。世界中の美味を訪ね辿り着いた味
濱野昌子さん(料理研究家)推薦
サロン風料理教室の草分けとして知られる濱野昌子さん。半世紀近く続けているサロンでは、毎回異なるレシピを披露されています。そのレパートリーの広さ、料理に対する造詣の深さには国内外の一流シェフも一目を置くほど。
「本当においしいものが好きなだけなんです」と微笑まれますが、食のアンテナを磨き、アップデートするためにレストラン通いも欠かせないといいます。
「今でも忘れられないのは、ホテルオークラ(現・オークラ東京)の小野正吉料理長のコンソメ。丁寧に手をかけているのが伝わってきました。
そしていちばん思い出深いお店は銀座にあった『マキシム・ド・パリ』 ですね。一歩店内に入ればすべてがフランス! お料理も空間もサービスも完璧。ノイリー酒とバターで仕上げる『舌平目のムニエル』は中がふっくら、外は程よくパリッとしていて最高だった……。シェフや支配人ともよくお話をして、お料理のポイントや調味料のことなどを教えていただいたものです」
食材選びやテクニックももちろん大切。ですが「心を込めて作ること、この味をこの人に食べさせたいという気持ちが美味につながると信じています」。
長年懇意にされている「リストランテ アルポルト」の片岡 護シェフの前菜や 「ラ・ベットラ」の落合 務シェフの「うにのパスタ」など、その人にしか出せない味わいを楽しみに店に足を運ばれることも。そんな濱野さんがこのところ足繁く通うのが、華やかなメゾンレストラン「ソンブルイユ」です。
白薔薇の品種を名前に持つ一軒家レストランはJR飯田橋駅のほど近く。扉の向こうには優雅で静かな空間が広がる。「若月稔章シェフに必ずお願いするのがビスクやヴィシソワーズなどのスープ類。きっちりと基本を守りながら、今風の軽やかなテイストもあって、本当にいいお味なんです。
どのお料理もひと口いただいただけで、すみずみまで幸せになります。この先、この店を超える素敵なレストランに出会えるかしら、って心配になるんですよ(笑)」。
春のコースの前菜は色鮮やかな「サーモンのマリネとリエット」。フランボワーズのヴィネグレットがアクセントに。 Information
ソンブルイユ
東京都千代田区富士見1-8-12
- 昼のコース7700円~、夜のコース1万5400円~ 個室2室
撮影/阿部 浩 角田 進 取材・文/露木朋子
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。