イタリアが誇る スパークリングワインの魅力
ミラノ・マルペンサ空港からクルマを北東に走らせて約1時間。風光明媚なイゼオ湖畔の南に広がるフランチャコルタ地方はスパークリングワインの銘醸地。特別な日の乾杯のワインとして、食中酒として。フランチャコルタの多彩な魅力に、現地への旅を通して迫ります。
エリアきってのエレガントな5つ星ホテル「ラルベレータ」にて。レストラン「レオーネフェリーチェ ヴィスタ ラゴ」のテラスからイゼオ湖を望む。オーナー一家が所有するフランチャコルタ「べラヴィスタ」でアペリティーボを。5分でわかるフランチャコルタ入門
古くからワイン造りが行われていたこの地域でスパークリングワインが生産されるようになったのは1961年。1995年には統制保証原産地呼称(DOCG)に認定され、イタリア最高峰のワイン産地として確固たる地位を確立しました。
誕生から60余年。その味わいも時代とともに常に進化しています。フランチャコルタとはどのようなワインなのでしょう?
フランチャコルタはミラノから約1時間 世界的なリゾート地・コモ湖とイタリア最大の湖・ガルダ湖のほぼ中間に位置し、古都ベルガモにも程近いフランチャコルタ地方。ミラノから日帰りでワイナリー巡りを楽しむにもちょうどよい距離にある。イゼオ湖がもたらす温暖な気候により、北イタリアながらもオリーブの木が茂る。また北側に聳えるカモニカ渓谷からの涼風が寒暖差をもたらし、美しい自然風景がぶどう栽培にもふさわしい環境を作り出している。イタリア最上級のスパークリングワイン
・瓶内二次発酵方式&長期熟成
シャンパーニュと同じ「瓶内二次発酵方式」を採用。秋、収穫されたぶどうでベースとなるワインを仕込み、翌春に個性豊かなベースワインを醸造家がブレンド。これを瓶に詰め、二次発酵のために必要な酵母と砂糖を加え、王冠栓で蓋をして水平に寝かせた状態で熟成に入ります。ベーシックなスタイルでも酵母に触れた状態(イーストコンタクト)で最低18か月の長期熟成が必須。ちなみにシャンパーニュは最低15か月、カヴァは最低9か月。
・ぶどうはシャルドネ、ピノ・ネーロ、ピノ・ビアンコ、そして土地伝来のエルバマット
フランチャコルタDOCGに認定されるぶどうを生産する畑は3010ヘクタールで、80%がシャルドネ、16.7%がピノ・ネーロ、3%がピノ・ビアンコという割合。残り0.3%のエルバマットは土地伝来の品種で、主にフレッシュな酸をもたらすものとして2017年に新たに認定されました。ぶどうの収穫は必ず手摘みで行うのがルールです。
・「ドサージュ」で決まる甘辛度
熟成を終えた後、瓶内の澱抜きをすることによって減少した液量を補充するためにベースワインに砂糖を加えたシロップを加える工程「ドサージュ」。この時の残糖量で「ブリュット」、「ドゥミ・セック」などの分類がなされますが、フランチャコルタはそもそもぶどうが完璧に成熟して酸がやさしいため補糖は最低限、あるいはしないものが多いのが特徴です。「ドサッジョ・ゼロ」、「ノン・ドサート」、「パ・ドゼ」、「ナチュール」、「ナチュレ」がその分類にあたり残糖量は3gまで。液量の補充には同じ品種・年の白ワインが使われます。
シャンパーニュとの違いは?
製造方法やぶどう品種など、シャンパーニュとの共通点が多いことから比較されることが多いのですが、ワインは気候や土壌が織り成すテロワール(土地の特徴)が色濃く出るもの。フランチャコルタは氷河によって形成された氷堆積土壌で温暖な気候のもとに育つぶどうの、ふくよかな果実感と重層的な味わいが持ち味です。
最近は食のトレンドや消費者の嗜好に合わせ、前述のように補糖せずに程よく酸を生かしてエレガントに仕上げたものも増えています。また、白ぶどうのみを使い、ガス圧を抑えた「サテン」は食中酒としても人気です。
「フランチャコルタ」とはどんなワイン? 個性豊かな5つのスタイル>>
この特集の掲載号
『家庭画報』2023年9月号
撮影/本誌・西山 航 取材協力/フランチャコルタ協会
『家庭画報』2023年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。