奥さまの規代さんと、「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」と挨拶し合って「あらたまる」元旦。今年も家族の穏やかで無事な1年を願って、お屠蘇で祝う。坪島土平作の燗鍋に屠蘇飾りを結んで華やかに。土井家の新年は必ずきもので祝う。新たに迎える——
一汁一菜風祝い雑煮
年の始めの元旦は、すべてが生まれ変わるとき。初日(はつひ)とともに新しい歳神様がやって来られて、この世にあるものすべてが新しい命をもつと信じられてきたお祝いの日です。
「新しい年を気持ちよく迎えるためには、暮れに掃除して住まいを清めることが、いちばん大事なことやと思います」と土井さんは語ります。
おせちを食べることがお正月なのではありません。お屠蘇をいただいて、新しい自分に生まれ変わるために、まずは場をきれいにするのが日本のお正月なのです。
「澄むことが大事。濁ったら『すみません』いうて謝らんとあかんのです。1年にいっぺん、きれいにしましょ。また汚れてしまうんですけど」
土井家では、ずっとお餅つきをしてきました。年末の1日、お雑煮用に家族や友人と大勢でお餅をつきます。家の仕事だから本気です。子どもたちも一生懸命に手伝います。
杵取りは餅つきのリーダー。土井家のリーダーは土井さん。杵をつくのに合わせて「ヨイショ」「ヨイショ」と声をかける。お餅つきは縁起がよいので、男性も女性も子どもたちも、全員が交替で杵を取る。土井家のおせち料理のリーダーは奥さまです。お正月のしつらいがすむと、土井さんがお重に盛り込みます。
そして清々しく迎える元旦——。
「わが家では、きものを着てお祝いします。毎年変わらぬ雑煮椀や器に、新しく出会った器を取り合わせるのも楽しみなことです」
令和という新世(あらたよ)。忘れていたお正月を迎える気持ちを、あらためて確かめましょう。
お正月には、まずお雑煮です。おせち料理より優先するのです。
上・【三つ肴】焼〆長皿(辻村史朗 作) 下・【大豆のお雑煮:作り方の詳細は下のレシピにて】欅杢出し 蓋付雑煮椀(和田瑾斎 作)、朱塗膳(和田瑾斎 作) 「お雑煮は、お正月の一汁一菜。お雑煮というひと椀に、お餅と具と汁が入って、これだけでお正月が迎えられます」
それぞれの家庭でお雑煮を工夫されてもいいでしょう。大切なことは、お正月らしく、きれいに美しく整えることです。
毎年恒例、土井家のお餅つき
蒸したてのもち米を温めた臼に取り、米粒が跳ねない程度に2人でこねてつぶす。杵取りは手水をして餅を外から内に返す。つき手は杵の重さを利用して打ち下ろす。
●大豆のお雑煮(三つ肴の作り方はこちら)
【材料(6~7人分)】・大豆 1カップ
・大根 100グラム
・にんじん 100グラム
・ごぼう 50グラム
・油揚げ 1枚
・煮干し 10グラム
・醬油 大さじ3
・青ねぎ 10グラム
・水 5カップ
・餅 適量
【作り方】(1)大豆は洗って分量の水につけて一晩もどす。
(2)(1)をもどし汁ごと鍋に入れ火にかけて、煮立ったらあくを取り40~50分ゆでる。
(3)野菜と油揚げはさいの目切りにする。
(4)大豆をざるに上げ、ゆで汁に水をたして4カップにする。
(5)鍋にゆで汁、(3)と(4)のゆで大豆と煮干しを入れて火にかける。煮立ったら醬油大さじ2で味つけし、10分煮て火を止める。
(6)別鍋にお湯を沸かし、餅を入れて5分ほど柔らかくなるまで煮る。
(7)(5)の火をつけて、青ねぎ、醬油大さじ1を加えてひと煮立ちさせ、餅を入れた椀によそう。