お姫様を”抱擁”したお菓子。今回紹介する「カリソン」にはそんな伝説が。
口に含むと舌の上でメレンゲがとろけ、お砂糖の甘さが口いっぱいに広がります。そこにアーモンドがひょっこりと顔を出し、レモンの芳香が鼻腔をくすぐる。抱きしめられ陶然と微笑むプリンセスの姿が目に浮かぶような、うっとりと表現したくなるお菓子です。
南仏プロヴァンス地方を治めていた王族、アンジュー家の善良王ルネ。彼は“めったに笑わない”と評判のお姫様をめとることになりました。(なんとも“善良王”なエピソードですが!)せめて結婚式では笑顔になってもらおうと、お抱えのパティシエに作らせたのがこのカリソン。名前はプロヴァンスの方言で“抱擁”を表す「Di Calin soun(ディ・カリン・スン)」という王の一言が由来。時は英仏100年戦争のさなか。フランス内のイギリス領(ナント地方)と接し、血縁と利害が複雑にからみあうナポリやバルセロナ地方の領主たちに挟まれながら71歳の天寿をまっとうした“善良王”の人柄そのものが、この“抱擁”に感じられます。