心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる 第12回(全17回) この時期の京都は観光客も少なく、心静かに本来の魅力を堪能できる絶好の季節です。京都を代表する料亭が満を持して開催する“料亭美術館”、精緻な“手業の美”に出会える美術館やショップ、そして“冬の美味”を味わう食事処──。今、注目の京都のさまざまな美の形が、ここにあります。
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「おまかせ」に身を委ねるか、「一品料理」を自在に楽しむか
“冬の美味”を堪能する
京都らしい風情が漂う石畳敷きの小路、祇園の「切り通し」に暖簾を掲げる「のぐち継」。寒さ厳しい冬には店の灯りがことのほか心に温かく感じられる。日本海で揚がったかに、ぶりや、地元で採れる根菜など冬の京都には美味なる食材が多く揃います。
第3部では最近オープンした新店を中心にご主人が考え抜いて仕立てたおまかせが楽しめる店と、食べたいものを自由に注文できる一品料理が中心の店、2つのタイプの料理店をご紹介します。
あなた好みの店にきっと出会えるはずです。
【おまかせ派】のぐち継〈祇園切り通し〉
花街・祇園の趣を残す切り通しの辰巳橋近くに佇む「のぐち継」は、予約至難の人気店「京天神 野口」の姉妹店。間口からは想像できないほど広々とした12席のカウンターで、店長の吉田大輔さんがにこやかに迎えてくれます。
おまかせコースより。手前から、聖護院大根と黒毛和牛の「肉吸い」。うどんつゆに牛肉の薄切りを入れた本来の肉吸いと違い、季節野菜と吉野葛仕立てに。自家製のからすみがかかる贅沢な「伊勢海老のかぶらあん」、おいしさのピークを迎える「鰤のお造り」。おまかせ5品の後は好みの一品を組み合わせ
「品数を抑えたおまかせに、おなかの具合やお好みに合う単品を追加していただくのがうちのスタイルです」。
おまかせは旬の食材をダイナミックに仕立てた料理5品と食事、デザートからなり、看板料理の「肉吸い」をはじめ、いずれも豪華な食材づくし。黒毛和牛のサーロイン、濃厚なうまみのぶりや伊勢海老の料理が次々に登場します。
シンプルな仕立ての「ビフカツサンド」3800円。そのままでもおいしいので、ソースは別添えに。持ち帰り用の折詰4000円。さらに追加可能な単品は、ビフカツサンドやコロッケ、カレーなどの洋食系から旬の一品まで二十数種類。コースの間でも、締めとしても味わえる、もう少し食べたい人や飲みたい人のためのメニューが並びます。品数やボリューム、持ち帰りまで気遣う、花街ならではの至れり尽くせりのおもてなしが楽しめます。
冬の一品の「ふぐの唐揚げ」2500円と「ふぐの白子焼き」2800円の盛り合わせ。上写真は2人前。白木のカウンターと辻村史朗氏の墨絵が際立つ店内。吉田大輔さんは長崎の五島列島出身。福岡、京都、東京での修業を経て料理長に就任。のぐち継(のぐちつなぐ)京都市東山区清本町371-4
TEL:075(561)3003
営業:12時〜13時(入店)、17時30分〜21時30分(入店) 不定休
おまかせ1万5000円、一品料理1000円〜2000円が中心
要予約
〔特集〕心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる(全17回)
表示価格はすべて税別です。
撮影/大泉省吾 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。