心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる 第13回(全17回) この時期の京都は観光客も少なく、心静かに本来の魅力を堪能できる絶好の季節です。京都を代表する料亭が満を持して開催する“料亭美術館”、精緻な“手業の美”に出会える美術館やショップ、そして“冬の美味”を味わう食事処──。今、注目の京都のさまざまな美の形が、ここにあります。
前回の記事はこちら>> 【おまかせ派】料理屋 まえかわ〈西木屋町松原〉
和食の王道の味を守る煮物椀「牡蠣真丈のすまし仕立て」とタンシチューのイメージで作られた「牛タンの柔らか煮ソテー」。酒と昆布と水でじっくり煮たタンに、揚げたてのほくほくの海老いもと白絞油でさっと炒めた鷹峯ねぎを合わせた、冬ならではの仕立て。正統あり遊びありのフリースタイルが魅力
「うちの料理は、ボーダーレスでフリースタイル。和食の定番からオリジナルまであって、メニューの幅は広いです」と店主の前川浩一さん。
一斉スタートで始まるおまかせは、肉を使ったり、ご飯代わりに炒飯やラーメンが登場することもあり、創意工夫に富んだ料理が月替わりで楽しめます。
「かぶら蒸し」をヒントにした、冬野菜と味わう「甘鯛のかぶら すり流し鍋」。2月の献立は、脂ののる甘鯛とかぶらを鍋仕立てに、柔らかいタンはシチューのように煮込んで鷹峯のねぎと合わせて、と冬の山海の幸がバランスよく、たっぷり。
和風のかにあんがかかる「かに玉風ごはん」。締めは必ず土鍋ご飯ともう1品の2種が出る。カウンター全員分を大きな土鍋で炊くダイナミックな演出に、カウンターからは歓声が上がる。さらに土鍋で炊き上げるご飯は、目の前で卵、あぶったかに、かにみそをのせてかにあんをかけ、ライブ感たっぷりにサービスされます。
サプライズあり、遊び心ありの料理がある一方で、奇をてらわない正統な和食の仕事を忠実に守っている料理が煮物椀。丁寧にひいた吸い地と椀だねで、端正な一品に仕上げています。
静動緩急のメリハリのある構成を楽しませてくれるのも、この店ならではの特徴です。
「祇園さゝ木」に13年間勤め、2020年6月に自店を開いた前川浩一さん。師匠譲りのライブ感のある料理に注目が集まる。料理屋 まえかわ(りょうりや まえかわ)京都市下京区西木屋町通松原下ル難波町405
TEL:075(744)0808
営業:18時30分一斉スタート 日曜、第2・第4月曜定休、不定休あり
おまかせ1万5000円 要予約
〔特集〕心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる(全17回)
表示価格はすべて税別です。
撮影/大泉省吾 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。