プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 枝豆飯
今日は連載を始めて最初の日曜です。土曜に身体を休め、日頃の気ぜわしさからも解放された日曜、少し凝った料理(でも実は簡単)、枝豆ご飯に挑戦してみませんか。
今、枝豆ご飯と言いましたが、正式には枝豆飯(めし)と呼びます。いつもながら、面倒くさい講釈お許しください。
日本料理で「御飯(ごはん)」と呼べるのは白いご飯だけで、それ以外の色ご飯は高価な松茸を使っても「飯(めし)」となります。
まだ、白いご飯が十分に食べられなかった頃の白米への憧れと、日本の伝統的な米への敬意が「飯」に「御」をつけ「御飯」となったのでしょう。一汁三菜などと言うときの一汁も味噌汁を指し、他の汁物ではありません。御飯同様に、「御」を3回もつけて「御御御付(おみおつ)け」とも呼びますね。
春から夏にかけての色飯は様々ありますが、どんな素材を使っても、出汁は昆布出汁にして、調味は塩と日本酒だけにするところが共通項です。薄口であっても醤油を使うと味も色も重たくなりますし、素材とする春や夏の野菜にもどこか合わない気がします。季節をどう演出するか、私たちプロもこういうセンスが日々、問われます。
もう一つ重要なコツで、色飯(一年を通して)に上手に油分を加えること。おいしさが増します。「上手に」と言いましたが、ここで、またセンスが問われます(笑)。
かやく飯などには油揚げを刻んで入れますね。秋冬ならいいのですが、春夏に使うと暑苦しくて……。ではどうしたらいいか。今日はそのセンスと技をお伝えします。
それから、残った色飯は、翌朝など焼きおにぎりにして目先を変えると喜ばれるでしょう。
さあ、今日もセンスよく(笑)野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「枝豆飯」は野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・同じ料理でも、調味は一年中同じではない。仮に塩分濃度が同じでも、暑いときには醤油よりも塩味を効かせる(吸いものも同じ)。また、甘い調味は一般的においしく感じさせるが、夏には重たく、素材の甘みも感じにくくなる。
・かつお出汁が万能なわけではなく、昆布出汁だからこそ出せる味もあることを知っておいていただきたい。
・油揚げは“極細”のみじん切りにして活用。涼しげでおしゃれに見える夏向きの技。
「枝豆飯」
【材料(2人分)】・米 1合
・昆布出汁 180cc
<調味料>
・塩 小さじ1/2弱
・日本酒 大さじ1
・油揚げ 適量
・生姜(みじん切り) 15g
・枝豆(塩茹でしてさやから出す) 50g
【作り方】1.米は炊く30分以上前に研ぎ、ざるに上げておく。
2.昆布出汁(飯の炊き上がりの柔らかさの好みで量を加減する)に調味料を加え、好みの味にする。
3.油揚げは2枚に開き、みじん切りにする。油揚げの質がよくない場合は、きれいな油で揚げ直すとよい。香ばしさが好みなら、オーブントースターできつね色に焼いて用いる。油分だけを加えたい場合は、開いた油揚げをそのまま加えて炊き、炊き上がり後に油揚げを除く。
4.炊飯器に米と2の出汁、油揚げ、生姜を加えてスイッチを入れる。
5.炊き上がったら、
塩茹での枝豆を飯が潰れないようふんわりと混ぜる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時〜14時 (夜)17時30分〜23時 ※土曜日のみ17時〜
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗