「賀茂なす田楽2種」
賀茂なすは京野菜のひとつで、北区周辺で古くから栽培されていた大丸なすです。柔らかいのですが、煮崩れしません。昔は加茂なすとも書きましたが、今はブランド京野菜として賀茂なすで統一されています。
もちろん、家庭ではそれに近い品種の米なすや丸なすで代用できます。下手に料理した賀茂なすよりも上手に料理した米なす、丸なすのほうがおいしい場合もあります。今日は、その上手な料理法の中から、田楽をご紹介します。
まん丸でどっしりとした賀茂なす。上手な田楽とは? そのためには、下手な田楽がなぜまずいのかを先に考えるといいでしょう。
まずい田楽は油を吸い過ぎていて、食べると、気持ち悪いほどに油がしみ出ます。また、揚げてあるので皮の部分が堅くなり噛み切れません。きっと、皆さまもそんな経験があると思います。
であれば、皮をむいてしまうか、むくのが面倒であれば、揚げても皮が噛み切れるようにする工夫をすればよいということになります。
なすは油と相性がよいので、なすをおいしくする分の油だけを吸収させ、余分な油は吸収させない工夫をすることが大切です。その工夫が生かされた調理法、「揚げ焼き」と「油焼き」を本日はお教えいたしましょう。
賀茂なすもちょっとの工夫でこの美味さ。野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「賀茂なす田楽2種」は野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 食感 ◎香り ◎刺激
・なすと油は相性がよいが、「薬も過ぎれば毒となる」「毒も薬も使い方次第」というように、油を上手に使ってなすのおいしさを引き出す。なすが油を吸い過ぎないよう工夫するのがコツ。
・揚げることで皮が堅くなるのであれば、皮をむくか、包丁目を入れておく。むいた皮は油で炒めてきんぴらにもできる。
「賀茂なす田楽2種」
【材料(2人分)】・賀茂なす(米なす、丸なすでも) 1個
・
田楽味噌(赤・白) 各適量
・油 適量
・実山椒、青柚子 各少々
【作り方】「揚げ焼き(写真右)」
1.賀茂なすの両端を切り落とし、横2つに切る。下のほうが膨らんで大きいので、真ん中より多少下側で切ると同じ量になる。
2.口当たりをよくするため、包丁の刃先を使って皮の部分だけを切るつもりで縦に上下に切り込みを入れる。完全に切らないと皮がつながって口に残る。
3.賀茂なすは肉質がしっかりしているので、火の通りをよくするため、フォークや竹串で両面をまんべんなく刺しておく。
4.フライパンに油を170℃くらいに熱し賀茂なすを入れ、揚げる。油を吸収し過ぎるので、ここで完全に火を通す必要はない。
5.全体の30%が揚がったくらいで油から引き上げ、あらかじめ200℃くらいに予熱したオーブンに入れ、火を完全に通し、余分な油をはき出させる。
6.火が通ったら、クッキングペーパーで表面にしみ出した油を拭き取り、温めた白の田楽味噌(堅いようであれば出汁でのばして温める。甘いのが好みなら、このときにみりんを加える)をなすの上面に広げ、グリルやオーブントースターで焦げ目をつけ、青柚子の皮をおろし金で削って、使い古した茶筅(ちゃせん)の先を切ったものなどを使って振りかける。
7.田楽味噌を少なめにして、なす本来の味を楽しみたい場合は、味噌の量を減らし、その分、温めた
美味出汁を少量かけてもよい
「油焼き(写真左)」
1.賀茂なすの両端を切り落とし、皮を薄くむき、揚げ焼き同様、横2つに切る。
2.1の両面をフォークや竹串でまんべんなく刺しておく。
3.なすの両面に刷毛で油を塗り、表裏返しながらオーブントースターでゆっくり焼く。表面にきれいな焦げ目がつき、中がふっくら焼き上がるまで火を入れる。表面が焦げそうになったら油を塗って焼く。焦げ目はついたが中まで火が入っていない場合は、アルミホイルをかぶせて焼くとよい。
4.火が通ったら、クッキングペーパーで表面の余分な油を拭き取り、温めた赤の田楽味噌を揚げ焼きと同様になすの上面に広げる。再度オーブントースターに入れて焦げ目をつけて、生の実山椒をスライスしてかける。
5.揚げ焼きのプロセスでも書いたように、田楽味噌を少なめにして、温めた
美味出汁を少量かけてもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。