プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 「フルーツトマトの赤出汁」
トマトの味噌汁、今ではかなり知られてきましたが、まだ意外に思われる方も多いかもしれません。
実は随分前から作られていたようです。最初に試みたのは、料理好きで自らも包丁も握った井上 馨(かおる)(明治の政治家、実業家)とも、食通として有名だった歌舞伎役者、8代目坂東三津五郎だったとも言われています。
明治から昭和初期にかけて活躍した近代数寄者たちもまた、彼らも自身が催す茶事で新しい食材や洋風のスタイルをいち早く取り入れています。
今日はこの連載で初めて味噌汁をご紹介します。具だくさんの味噌汁もおかずとしてはよいと思いますが、野菜のおいしさを味わうには、主となる具材を中心に据え、脇役を添えるくらいがいいのかもしれません。脇役には香りのもの、あるいは茶懐石でよく用いられる溶き辛子を添えます。
トマトの赤出汁には、ぜひフルーツトマトを使っていただきたいと思います。その甘みと酸味が赤出汁味噌とよく合います。
食の先達たちを見習い、日々新たに野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「フルーツトマトの赤だし」は野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 食感 ◎香り ◎刺激
・味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供す」「温め直さない」。
・トマトは軽く温める程度で、火を入れ過ぎない。そうすることで、トマトの酸味や甘みが生きたメリハリのある味が感じられ、最後には一体となったおいしさに至る。
「フルーツトマトの赤出汁」
【材料(2人分)】・出汁 適量
※かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用には昆布出汁でも
・赤出汁味噌 適量
・フルーツトマト(湯むきする) 2個
・三つ葉(刻む。青じそでも) 適量
・溶き辛子 適量
【作り方】1.鍋に出汁を注ぎ火にかける。
2.80℃くらいになったら、湯むきして隠し包丁(食べやすく切ってはいるが、完全には切り離さない)を入れたトマトを入れる。火を通すのではなく軽く温める程度に。
3.トマトを温めながら、赤だし味噌を溶き、好みの味にし、90℃を超えたくらいで火から下ろして椀に盛り、刻んだ三つ葉をかけ、溶き辛子をのせて供す。三つ葉の代わりに脇役の野菜として、じゅん菜やズッキーニもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時〜14時 (夜)17時30分〜23時 ※土曜日のみ17時〜
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗