プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
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田楽味噌、酢味噌、なめ味噌の一部、これらのすべてを私たちプロは、玉味噌(たまみそ)という汎用性の高い味噌をベースに作ります。
一般的に田楽味噌といえば柚子味噌や木の芽味噌・ふきのとう味噌、酢味噌といえば辛子酢味噌が有名ですね。今回は、そのレパートリーを一気に広げようと思います。なんと、玉味噌にフルーツの風味と酸味を加えるのです。これまでの常識を一変するような新しい田楽味噌、酢味噌となり、活用範囲も大きく広がります。
「
いちじくの蜜煮」で酸味の重要性については既に述べましたが、今回の玉味噌もまさにフルーツの酸味と風味がポイントになります。
今日、ご紹介する以外にも、ラズベリー味噌、マンゴー味噌、パイナップル味噌、焼きバナナ味噌、フルーツトマト味噌、いちご味噌などもよいと思います。フルーツではありませんが、実山椒味噌、桜味噌(桜の葉・花の塩漬け)、フレッシュバジル味噌もおいしいです。
また田楽は定番の豆腐やなすに味噌をのせるだけでなく、こんにゃく、大根、海老いも(または里いも)、長いも、たけのこ、ねぎ、ふき、ふきのとう、湯葉、ごま豆腐などでもできます。フルーツではいちじく(「
焼きいちじくの田楽」)、いちご、柿、バナナもいいでしょう。
既成概念を打ち破り、新たな発想で野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「フルーツ酢味噌 刺し身こんにゃくにのせて」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・ベースになる玉味噌の甘みを抑えることで、多様なフルーツと合わせられる。甘みがたりなければ後から追加できる。
・もともと酸味があるフルーツが合う。酸味が薄ければ柑橘酢などをたす。
野菜料理をおいしくする7要素の1つである油分をたしたければナッツ類をのせてもよい。刺激を追加したければ、からしや粗びきこしょう、柚子こしょうを。
・刺し身こんにゃくは下ゆで不要という表記があるものでも、えぐみが残っている場合があるので、一度茹でて使う。
・歯ごたえのあるこんにゃくが好みならそのままで、柔らかいのが好みなら、まな板の上に置いて手のひらでこんにゃくを強く叩く。
「フルーツ酢味噌 刺し身こんにゃくにのせて」
右からぶどう味噌、りんご味噌、パッションフルーツ味噌、キウイ味噌、ブルーベリー味噌。【材料(3人分)】・玉味噌(白) 大さじ10
(「
玉味噌、生姜味噌」)
・ブルーベリー 9粒
・キウイフルーツ 1/2個
・ぶどう(巨峰など) 5粒
・りんご(紅玉など酸味のあるもの) 30g
・ドライりんご 少々
・パッションフルーツ 1.5個
・刺し身こんにゃく 300g
【作り方】1.フルーツ酢味噌を作る。
〈ブルーベリー酢味噌〉
玉味噌大さじ2と半分に切ったブルーベリーを混ぜ合わせる。
〈キウイフルーツ酢味噌〉
キウイは熟れたものを使う。玉味噌大さじ2と皮をむき6mm角に切ったキウイを合わせる。
〈ぶどう酢味噌〉
巨峰などの皮をむき、実は1cmのさいの目切りにする。むいた皮の内側をペティナイフの背でこそいで、皮に付いたおいしい部分と色素を集めて、実と一緒に玉味噌大さじ2に混ぜる。
〈りんご酢味噌〉
りんごは酸味のある品種を選び、皮のまま4~5mmのあられ切りにする。ドライりんごはりんごより少し小さめに切る。玉味噌大さじ2にりんごとドライりんごを加えて合わせる。
〈パッションフルーツ酢味噌〉
パッションフルーツは2つに切って中身を出し、玉味噌大さじ2と混ぜ合わせる。
2.刺し身こんにゃくは、茹でて水に放し軽くもみ洗いする。1枚約10g×30枚になるように刺し身のように切る。
3.2のこんにゃくに1の各酢味噌をかけて供する。
※油分を追加したければ、砕いたナッツ類、揚げた湯葉などをのせる。
※ゆるめの味噌がよければ出汁でのばし、甘めがよければ砂糖をたす。酸味がたりない場合はレモン汁などの柑橘酢を少量加える。また、キウイ・ぶどう・りんご酢味噌には好みで練りからしを、ブルーベリーには粗びきこしょうを少量加えてもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗