プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 酢蓮の和えもの4種
毎日の食事のメニュー、悩みますよね。何か思いついても、あれっ?一昨日のものと似ているとか、それは先週も作ったしなぁ……と。
この連載の初回に、「プロとしては、何か食材をお題として出されれば、すぐに数10種類の料理が浮かぶ」というようなことを書きました。実際そうなのですが、次々に湧いて出てくるのではなく、組み合わせをしているだけなのです。今回はその方法をご紹介します。
まずは調理法別に、生食に近いもの、煮もの、焼きもの、揚げもの、酢のもの、和えものと5~6種類のカテゴリーに分け、次に和えものなら、〇〇和えや△△和えといった具体的手法を5~6種ずつあげていきます。そして、既に計30種くらいになったものに他の食材を組み合わせたり、30種同士を組み替えたりすればあっという間に100くらいの料理になります。もちろん、中にはイケていないのも多いのですが(笑)。
偉そうに言いましたが、実際は皆さまも同じことを日頃おこなっていると思います。食事のメニューではなく、毎日、着る服で。
そう、少ない服でもおしゃれを楽しめる着回しコーディネート術です。主役級の服ばかりでなく、シンプルで着回ししやすい服を用意し、それをベースに組み合わせを考えると、コーディネートの幅が広くなると聞きました。そして、その筆頭が白シャツだとか。
白といえば、「
新れんこんの酢蓮2種」で、これはシンプルなおいしさと白の美しさを愛でる料理だと述べました。今日は何か一つ主菜を作り、あとは作り置きしておいた酢蓮をアレンジコーディネートして、食卓に並べてみるのはいかがでしょう。
毎日のファッションと同じ感覚で、おしゃれに野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「酢蓮の和えもの4種」は、4品すべてで野菜料理をおいしくする7要素中7要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・酢蓮(甘酢漬け)は後でアレンジが効くように、作り置きする際に薄い味つけにしておく。酸味も味も風味も後からたすことができる。
・同じごま和えでも、風味や食感、見た目を替えることはできる。なめらかなごま酢クリーム、いりたてごまの歯ごたえを生かしたもの、いった黒ごまにほのかなシナモンの風味を忍ばせたもの。他にもからし和え、海苔和え、各種酢味噌和えなどもできる。
「酢蓮の和えもの4種」
右前は泥蓮(黒ごま和え)、左前はごま酢クリーム和え、右奥はごま山椒和え、左奥は梅肉和え。【材料】・酢蓮(甘酢漬け) 適量
「
新れんこんの酢蓮2種」
・梅肉(梅干しを裏ごししたもの、または市販品でもよい) 適量
・ごま酢クリーム 適量
白ごまペースト(市販品でもよい) 50g
酢 大さじ3
砂糖 大さじ3弱
・いり白ごま(市販品を軽くいり直す) 適量
・粉山椒 ごく少々
・いり黒ごま(市販品を軽くいり直す) 適量
・シナモン ごく少々
【作り方】1.酢蓮は甘酢より取り出し、酢をきっておく。
2.和えものを作る。
(1)梅肉和え
1の酢蓮を好みの量の梅肉で和える。
(2)ごま酢クリーム和え
市販の白ごまペースト(油が分離している場合はよくかき混ぜる)に酢と砂糖を加えてよく混ぜる。1の酢蓮を好みの量のごま酢クリームで和える。
(3)ごま山椒和え
市販のいり白ごまを軽くいり直して、まな板の真ん中に集めてのせ、包丁でまとめて刻み(ごま1粒を3~4つに切る感じ)切りごまにする。すり鉢で粗くすってもよい。そこに粉山椒をごく少量加えて1の酢蓮を和える。
(4)泥蓮(黒ごま和え)
市販のいり黒ごまを軽くいり直して、すり鉢に入れて軽くする。粒が半分以下の大きさになったら、シナモンをごく少量加えて1の酢蓮を和える。ちなみにこの料理は江戸時代の料理書にもある。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗