きのこのカリカリ焼き、すき焼き
昔はきのこといえば天然のものしかなく、倒木や切り株などに生えることから“木の子”と呼ばれるようになったそうです。今は菌床栽培により1年を通じて出回り、低価格で手に入ります。
また、低カロリーで食物繊維が豊富な上、種類によってはビタミンDやB類、カリウムやリンなどのミネラル分も含有。免疫力を高めるといわれるβ‐グルカンという多糖類も含まれています。
そんなきのこ類は自然・健康志向の高まりで注目されていますが、健康のためだけではなく、旬ならではの調理法でおいしく食べたいものですね。
今回はきのこをメインにした料理を2品紹介します。一つはカリカリに焼いてきのこの香りと食感を引き出して肉料理にも使えるたれで供します。もう一つはすき焼きの肉並みに食べごたえがあるように仕上げます。
安くて健康にもよいきのこを上手に使って、今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「きのこのカリカリ焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・きのこをカリカリに焼くためには多めの油が必要だが、電子レンジで加熱した後に焼くことで必要以上の油を吸収しない。
・きのこの香りは焼くことで生まれる。炒めるのではなく、フライ返しできのこを押さえながら、強火で一気に水分を飛ばすように焼く。
・「きのこのすき焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・割り下で焼き煮することによって、きのこを肉のような食感にし、練り玉で味にボリューム感を出す。
・すき焼きのような甘辛味には、野菜料理をおいしくする7要素中の1つでもある刺激を加える意味で、スプラウトなど生野菜ならではのエネルギーを加えるのもよい。
「きのこのカリカリ焼き」
【材料(3人分)】・ひらたけ 1パック
・まいたけ 1パック
・しめじ 1パック
・エリンギ 1パック
・しいたけ 1パック
・サラダ油 適量
・塩 少々
・こしょう 少々
・たれ 適量
作りやすい分量:
にんじん1/2本、たまねぎ1/2個、りんご1/2個、にんにく1/2片、薄口醤油25cc、濃口醤油375cc、日本酒350cc、みりん350cc、砂糖110g
【作り方】1.ひらたけ、まいたけ、しめじ、エリンギ、しいたけは石づきを削り落とし、加熱すると縮むので一口大より少し大きめに切る。
2.きのこを1種類ずつ耐熱皿に入れて500Wの電子レンジで1~2分加熱する(機種ときのこの量によって変わる)。触ってみて柔らかくしんなりしたらよい。
3.フライパンを火にかけてサラダ油を多めにひく。しんなりさせたきのこをすべて入れ、塩・こしょうして強火で一気に水分を飛ばすように焼く。フライ返しできのこを押さえながら焼いて焦げ目がついてきたら裏返す。ベジタリアンでなければ、きのこと一緒に鶏の皮を焼くと旨みが増す。
4.きのこに添えるたれを作る。にんじん、たまねぎ、りんご、にんにくをすべてすりおろして、すべての調味料と合わせて火にかける。沸いたら中火~弱火にして2割ほど煮つめて冷ます。日持ちし、肉料理のたれとしても重宝するのでまとめて作っておき、冷蔵庫で保存しておくとよい。
5.きのこがカリカリになったら、フライパンの中の余分な油をクッキングペーパーで拭き取り、さらに30秒ほど焼き、器に盛る。たれはきのこに直にかけるのではなく添えて供す。
「きのこのすき焼き」
【材料(3人分)】・ひらたけ 1パック
・まいたけ 1パック
・しめじ 1パック
・エリンギ 1パック
・しいたけ 1パック
・すき焼き割り下 適量
出汁2:日本酒1:濃口醤油1:砂糖0.5の割合
・練り玉(卵黄ソース) 適量
(作りやすい分量)
卵黄(ガーゼなどでこしておく)3個、出汁30cc、薄口醤油小さじ1、みりん小さじ1
・ナッツ類(ピスタチオ、カシューナッツ、松の実など) 適量
・花穂じそ 適量
【作り方】1.きのこの下処理は「きのこのカリカリ焼き」の作り方1~2に同じ。
2.割り下を作る。材料を鍋に入れてひと煮立ちしたら火からおろして冷ます。日持ちするのでまとめて作り、冷蔵庫で保存する。日本酒を赤ワインに替えるとワインにも合うきのこ料理となる。
3.卵黄を湯煎で練った練り玉(卵黄ソース)を作る。作り方は黄味酢の要領と同じ。「
金時草のお浸し、黄味酢かけ」参照
4.フライパンを火にかけてサラダ油をひく。ベジタリアンでなければ、サラダ油と牛脂を合わせると旨みが増す。きのこを加え、強火で一気に水分を飛ばすように焼いて焦げ目をつける。
5.あらかじめ用意しておいた割り下を、きのこを炒めているフライパンに好みの量加えて強火で一気に絡ませる。
6.きのこを器に盛り、練り玉を所々にかけた上に、ナッツ類と花穂じそを散らす。今回は使用しなかったが、スプラウト(ブロッコリー、マスタード、セロリ、クレスなど)を添えてもおいしい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。