プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 秋野菜とコリンキー、長ひじきの柑橘酢和え
サラダについて「
夏野菜のおひたし」でお話しさせていただきました。私も大好きなサラダですが、一部に見られる健康に良いという盲目的信仰には注意が必要で、上手に調理し食べることが大事です。
六雁では野菜のおひたしに、茹でた青菜だけでなく、焼いたり、炊いたり、酢漬けにしたりと、それぞれに調理したあらゆる野菜を加えます。もちろん加熱した野菜だけでなく、生のほうがおいしいものは生で加えて、おひたし全体のエネルギーを高めます。
生食用に開発されたかぼちゃの仲間、コリンキー。おひたし以外にも、「
春菊と秋野菜の辛子ごま酢味噌和え」のように生の野菜をメインにし、和え衣などをかける料理もよく作ります。今日の料理はその中間に位置するような野菜料理で、乾物の長ひじきも加えました。
ひじきは「
ひじきの炒め煮」で既に紹介していますが、そのままでは渋みがあるため、煮る→蒸す→乾燥の加工で食べやすくします。ひじきの茎部分は長ひじき(茎ひじき)と呼ばれ、歯ごたえがあり炒めものや和えもの、サラダなどに向いています。先端の芽や小枝の柔らかい部分は芽ひじきと呼ばれ、煮ものやひじき飯、和えものにするとおいしいです。
乾燥ひじきは水でもどすと8~10倍の量に増えるのでたっぷりの水でもどします。芽ひじきは5~10分、長ひじきは20~30分でもどります。砂などがついていることがあるので、もどすときには注意が必要です。(「
ひじきの炒め煮」参照)
長ひじきをサラダに使う場合は柔らかくもどし、水気をきった後、薄味の炒め煮にします。それが手間ならフライパンでからいりすると、余分な水気が抜けて特有の磯臭さも和らぎ、風味がぐっとよくなります。
おひたし、サラダと調理方法にとらわれる必要はありません。茹でた野菜、調理した野菜、生野菜、乾物を合わせておいしい野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「秋野菜とコリンキー、長ひじきの柑橘酢和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・季節の柑橘酢(今回はかぼす果汁)を使った加減酢に少量の油を加えることで、穏やかな酸味と風味になり和食らしい味わいに。
・長ひじきはもどした後、からいりすることで余分な水分が抜け、よい食感になり磯臭さも和らぐ。
「秋野菜とコリンキー、長ひじきの柑橘酢和え」
【材料(3人分)】・コリンキー 1/8~1/6個
・長ひじき(乾物) 20g
・ほうれん草の茎 1パック分
・みょうがの甘酢漬け(外側の赤い部分) 6枚
・柑橘醤油
加減酢100cc+サラダ油小さじ2、太白ごま油小さじ1
加減酢の作りやすい量
出汁6:みりん1.5:濃口醤油0.5:薄口醤油1.5:酢1.5:柑橘酢(かぼす果汁)0.5の割合
・白いりごま(市販のものを軽くいり直す) 少々
【作り方】1.コリンキーは皮を厚めにむいて、約3㎜角×約7cm長さに切る。
2.大きめのボウル2つに水を用意し、1つに長ひじきをつけてもどす。15分ほどしてある程度もどったらひじきをすすぐように混ぜ、両手ですくってもう1つのボウルに移し、さらに5~10分ほどもどす。最初のボウルの底に砂が沈殿している可能性があるので、ひじきだけを手ですくうこと。ひじきが十分にもどったら、何回かに分けて両手でひじきをすくってざるに上げる。
3.フライパンを火にかけ油はひかず、水気をきったひじきを加えてからいりする。
4.ほうれん草の茎は6~7cm長さに切った後、縦に2つに切り、さっと茹でておく。
5.みょうがは外側の赤い部分をむいて甘酢漬けにし、縦に5~6mm幅で切っておく。「
みょうがの甘酢漬け」参照
6.かぼす果汁で作った加減酢をボウルに入れ、サラダ油とごま油を加えて泡立て器でよく混ぜる。
7.コリンキー、長ひじき、ほうれん草の茎、みょうがの甘酢漬けをボウルに入れて混ぜ、適量の柑橘醤油で和えて器に盛り、最後に白いりごまをふる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗