カリフラワー酒肴彩々
今日はカリフラワーを彩りよく料理します。カリフラワーという名前はキャベツ類の花を意味し、そういえば私が子供の頃は花キャベツと呼んでいたような記憶があります。昔は白が主流でしたが、今は緑、紫、オレンジなども日本でも育てられ、スーパーマーケットなどで見かけるようになりました。
彩り鮮やかなカリフラワー。右上はロマネスコという名称で、先端が尖ったユニークな形状をしている。右下はオレンジカリフラワー、左上はパープルフラワー。カリフラワーを5つの方法で料理し、小林東五先生の粉引(こひき)に「雪月花鳥水」の文字を書いた器に盛りました。小林東五先生は禅者にして、かつ書、陶芸、篆刻とその芸術活動は多岐に渡ります。私が20代の頃から教えをいただいていました。また、六雁オープンの際も多くの器や酒器でお力添えを頂戴し、実はこの連載で既に何回か使っています。
かつて食材を料理することのみにとらわれ過ぎて視野が狭くなっていた私に「天下国家を料理する、人間を料理する」ということを教えてくださいました。さらに「料理も人生と同じく、味のない物(無垢なるもの)に煩悩により味つけし、料理(人生、人間)となる。甘い、辛い、酸い、苦い、鹹い(からい。しょっぱいという意味)の煩悩が料理であり、煩悩でつくる」「料理をつくるにあたっては見識に基づき、その料理を食べる人に合う料理を提供する。動物に人の食べ物を与えても、その良さはわからない。その嗜好で人となりがわかる。森羅万象を悟り、移ろいゆくものを感じ、その人のために気持ちをこめて料理を作りなさい」とも。
素材を生かしてなどと口では言いながらも、それも含めて作り手の煩悩で色づけるのが料理、年齢や経験を重ねるごとにそう思うようになりました。私の作った料理を通して私の人となりや思惑、煩悩が見透かされる。読者の皆さまの目に私はどう映っているのでしょう(笑)。私の野菜料理を楽しんでください。
ちょっとしたコツ
・「カリフラワー酒肴彩々」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・カリフラワーを上手に一口大の小房に分けるには、つぼみの部分に包丁を入れるのではなく、裏から茎を縦に割るように包丁を入れて、途中から手で裂いて半分にし、それから包丁で小房に分ける。
・茎や外側の小さな葉も食べられる。茎は堅い外皮をピーラーでむいて炒め物などに。
・白のカリフラワーを白くゆで上げるには小麦粉や酢を湯に加える方法(湯1Lに小麦粉または酢を大さじ1)がある。
・堅めに茹でて水に放さず、ざるにあけてそのまま余熱で火を通すと水っぽくならない。
・紫カリフラワーは茹でると緑色になるものと紫色が残るものがある。今回は紫が残るパープルフラワーを使用。湯に酢を加えて茹でると発色する。
・500Wの電子レンジで2分加熱すると、手軽で栄養や旨みも抜けにくいが、茹でる場合と違い、途中で固さを確認しづらく理想の食感にするのが難しい。
「パープルフラワーしば漬け和え」
【材料(3人分)】・パープルフラワー 1/3株
・しば漬け パープルフラワーの1/4〜1/3量
・酢 少々
・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
【作り方】1.パープルフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。
2.鍋に湯を沸かし酢を少々(湯1Lに酢大さじ1)加え、パープルフラワーを入れて茹でる。
3.歯ごたえが残るよう堅めに茹でたら、水に放さずざるに上げて薄く塩(材料外)をふる。
4.しば漬けは粗みじん切りにしておく。
5.パープルフラワーが冷めたら土佐酢でさっと洗って、酢をきってボウルに入れ、しば漬けと合わせて器に盛る。
「カリフラワー南蛮漬け」
【材料(3人分)】・カリフラワー 1/3株
・揚げ油 適量
・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・赤唐辛子(輪切り) 少々
【作り方】1.カリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ手で裂いてから包丁で一口大の小房
に分ける。
2.フライパンに揚げ油を入れ、火にかけて170℃くらいになったらカリフラワーを入れて揚げる。
3.歯ごたえが残るくらいに揚がったらクッキングペーパーに広げて余分な油をきり、土佐酢に赤唐辛子と一緒に漬ける。20分以上漬けて味を含んだら酢をきって器に盛る。
「カリフラワー味噌漬け」
【材料(3人分)】・カリフラワー 1/3株
・味噌漬け用の味噌 適量
作りやすい分量:
粒白味噌(西京味噌)500g(味噌は他の味噌でも構わないが、塩分濃度により、酒やみりんの量を加減する)、日本酒60cc、みりん60cc
【作り方】1.カリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。
2.鍋に湯を沸かしカリフラワーを入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げて薄く塩(材料外)をふる。
3.カリフラワーを4時間味噌漬けにする。濃い味が好みなら5時間漬けてもよい。味噌漬けの仕方は「
パプリカの昆布押し、味噌漬け」参照。
4.あらかじめ予熱したグリラーやオーブントースターでカリフラワーを焼いて、きれいな焼き目をつけて器に盛る。
「オレンジカリフラワー辛子浸し」
【材料(3人分)】・オレンジカリフラワー 1/3株
・出汁 200cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい
・薄口醤油 大さじ1
・練り辛子 30g
【作り方】1.オレンジカリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。
2.鍋に湯を沸かしオレンジカリフラワーを入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げて薄く塩(材料外)をふる。
3.辛子出汁を作る。ボウルに出汁を入れて薄口醤油を加え、練り辛子を溶く。
4.カリフラワーが冷めたら、辛子出汁のボウルに加えて出汁を全体に絡ませる。汁気をきって器に盛る。
「ロマネスコ塩昆布和え」
【材料(3人分)】・ロマネスコ 1/3株
・塩昆布(みじん切りにする) 適量
・結び昆布 少々
・揚げ油 適量
【作り方】1.ロマネスコは茎側から切り込みを途中まで入れ手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。
2.結び昆布(めでたい席のお茶に浮かべる一つ結びの昆布)を160℃の油で揚げて、キッチンペーパーに広げて余分な油を除く。結び昆布は普通の昆布を湿らせてマッチ棒くらいに切ったもので代用してもよい。
3.鍋に湯を沸かしロマネスコを入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げる。水気がきれたら、温かいうちにボウルに移して塩昆布と和え、味をつけて器に盛り、揚げ昆布を添える。塩昆布の代わりにとろろ昆布(おぼろ昆布でもよい)と梅肉で和えてもおいしい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。