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洋梨で作る和の前菜。濃厚な甘みを、わさびや柚子こしょうでぴりっと引き立てます

2021.11.13

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

洋梨とかぶのわさび風味、洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え


洋梨とかぶのわさび風味、洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え

今日は洋梨を使った料理です。日本の梨が丸いのに対して洋梨は上が細くて下が大きな形をしており、洋梨体型という言葉もありますね。ヨーロッパではこの世に存在する最も美しい果物とされ、その形は女神の乳房にたとえられます。和梨がみずみずしくシャリシャリした食感であるのに対し、洋梨はねっとり甘く、とろけるような香りです。

ただ、洋梨は和梨と違って追熟をさせないとおいしくなりません。収穫したばかりのものにはでんぷんがわずかに含まれ、ゴリゴリと堅くて甘みもあまり感じられません。追熟させるとでんぷんが糖分に分解され、ビタミンBやCも多くなります。また、熟すに従って不溶性ペクチンが水溶性のペクチンに変化するので、トロッとしたなめらかな肉質になるのです。


洋梨とかぶのわさび風味、洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え

買ってきた洋梨がまだ堅い場合は紙袋に入れて15~20℃前後で追熟させます。甘い香りがし始めて軸の周辺を軽く触って柔らかくなっていたら食べ頃です。洋梨は形が凸凹していても味には影響しません。表面に傷がなく、部分的に柔らかくなったりしていないものを選びます。

今回は十分に追熟させた洋梨に、柚子こしょうやわさびの風味と辛みでアクセントをつけて調理し、市松模様の器に盛りました。市松の名称は江戸時代に人気のあった女方歌舞伎役者「佐野川市松」に由来します。彼がはいていた石畳柄の袴が当時の女性の間で大流行したため、市松模様と呼ばれるようになりました。四角形が途切れることなく並ぶ模様は子孫繁栄、永遠を意味し、古くから愛されて、同様の柄は海外でも多く見られます。

洋梨を横に並べ、上に積み重ねて盛りつけ、途切れることなく並ぶ様を市松模様にかけました。冒頭の女神の乳房しかり、市松しかり、人が美しい、そしておいしいと感じるものの根幹は性別や国、文化の違いを超えるのかもしれませんね。そこまでは行けなくても、お前は“ようなし(用無し)”と捨て去られないよう私も頑張ります(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


「洋梨とかぶのわさび風味」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・白のかぶに比べて黄色のかぶは肉質がしっかりしているので、白より薄くカットすると同じくらいの食感になる。

・本わさびは酢に混ぜてから時間が経過すると、香りと辛みがとぶので直前に加える。市販のチューブ入りわさびは酢と混ぜても辛みが飛びにくい

・揚げごぼうと揚げ昆布が食感と風味、そして油分と旨みを加える。

「洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・紅芯大根は赤い部分だけでなく、外皮の下の緑の部分も残してせん切りすると、色のアクセントとなって美しい。

・せん切りにした紅芯大根は酢につけるのではなく、強めの酢で和えて味をつけると同時に色を出す。薄めの合わせ酢に浸けると赤の色が少し抜けてしまう。







洋梨とかぶのわさび風味、洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え

「洋梨とかぶのわさび風味(左)」


【材料(3人分)】
・洋梨 1個

・かぶ(中) 1個

・黄かぶ(中。なければ白のかぶだけでもよい) 1個

・塩 少々

・水菜 少々

・レッドキャベツスプラウト(なければ貝割れ菜でもよい) 1/2パック

・ごぼう 15cm

・刻み昆布(なければ白板昆布を刻んだものでもよい) 適量

・揚げ油 適量

・加減酢 50cc
出汁6:みりん1.5:濃口醤油0.5:薄口醤油1.5:酢1.5:柑橘酢0.5の割合

・薄口醤油 小さじ1/3

・本わさび(市販のチューブ入りわさびでもよい。その場合は量を減らす) 8g

・オリーブ油(お好みで) 2cc

【作り方】
1.追熟させた洋梨の皮をむき、くし形(一番厚い部分が1cm強くらい)に切って種の部分を除く。

2.かぶと黄かぶは皮をむいて、かぶは2mmくらいに、黄かぶは1mm強にスライサーでスライスする。塩からくない程度に塩をしてしんなりさせておく。水菜とレッドキャベツスプラウトは洗った後に2.5cmに切る。

3.ごぼうは5cmに切って櫛刃をつけたスライサーで2mm角×5cm長さのせん切りにし、さっと水で洗って水気をきる。フライパンに揚げ油を注いで火にかけ150〜160℃に熱してごぼうを入れる。きつね色にカラッと揚がったらクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。刻み昆布も150〜160℃の油で同様に揚げておく。

4.わさび酢を作る。ボウルに加減酢を入れ薄口醤油を加え、好みでオリーブ油も加える。本わさびを使う場合は食べる直前にわさびをおろして加え混ぜる。

5.かぶと黄かぶは出た水分を軽く拭いて、それぞれ二つ折りにする。器にかぶ、洋梨、黄かぶ、洋梨の順で並べ、これをくり返して盛りつける。その上からわさび酢をかけ、揚げごぼうと揚げ昆布を混ぜたものに、水菜とレッドキャベツスプラウトを加えて上からのせる。

「洋梨と秋野菜の柚子こしょう和え(右)」


【材料(3人分)】
・洋梨 1/2個

・紅芯大根 1/3〜1/2個

・塩 少々

・りんご酢(市販品。薄めて飲めるタイプの甘味が入ったもの) 適量

・れんこん 3cm

・揚げ油 適量

・サラダ油 少々

・マスカット(縦に十文字に切る) 3粒

・柚子こしょう酢 約30cc
りんご酢30cc、柚子こしょう小さじ2

【作り方】
1.紅芯大根は緑の部分が少し残るように外皮をむき、スライサーで横に3mm厚さの輪切りにする。輪切りにしたものを3mm幅のせん切りにして薄く塩をふる。水分が出てしんなりしたら、水気を軽くきってボウルに入れ、りんご酢を好みの量加えて混ぜる。

2.追熟させた洋梨1/2個分の皮をむき、縦に2つに切る。種の部分を除いて横に5mm厚さに切る。

3.れんこんはピーラーで薄く皮をむき、スライサーで2mm厚さのものを6枚スライスする。水に放してでんぷんを流し、布巾に広げて水分を除く。150〜160℃の油できつね色に揚げクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。残りのれんこんは5mm厚さのくし形に切って、サラダ油をひいたフライパンで焦げ目がつくくらいに焼いて、塩で味をつける。

4.柚子こしょう酢を作る。ボウルに柚子こしょうとりんご酢を入れよく混ぜる。

5.紅芯大根の酢を軽く絞り、ボウルに入れる。洋梨、マスカット、焼いたれんこんを加え混ぜて器に盛り、柚子こしょう酢をかけ、揚げれんこんを添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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