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彩りも綺麗な小豆と黒豆のおこわ3種。たっぷり炊くのがおいしさのコツです

2021.11.21

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

栗赤飯、黒豆おこわ、黒豆梅おこわ


栗赤飯、黒豆おこわ、黒豆梅おこわ

正月の祝い料理であるおせちの定番、黒豆は、既に「黒豆の蜜煮」で紹介しましたね。「黒」という色自体にはあまり縁起ものという印象がないかもしれませんが、道教では邪除けの色として尊重されています。おせち料理の黒豆には黒く日焼けするほど元気(まめ)に働けるようにという願いが込められていると言います。

黒豆が体によいことは昔から知られており、民間療法としてせきが出たり、喉に痛みを感じる際に黒豆の茹で汁を飲むことが伝承されてきました。黒豆の皮に含まれるアントシアニンを含むポリフェノールには、抗酸化作用による老化防止・血流改善・血圧抑制などの効果があります。また、内臓脂肪を減らし高血糖を抑えるなど抗メタボ効果があるとの報告も。


黒豆を柔らかく茹でもどす際の茹で汁は、アントシアニン系色素が溶け出して紫がかった茶色になりますが、この色素は酸性で赤、アルカリ性で青や紫になります。一部の地域では黒豆の茹で汁に酸を加えた鮮赤色の飲みものが古くから愛飲されているそうです。

今日はその性質を使った黒豆の赤いおこわも紹介します。黒豆のおこわは全国にありますが、地域によって慶事・弔事とその用いられ方が違います。一般的に赤飯は慶事、黒豆おこわは弔事のものとされますが、一部の地域では弔事にも赤飯を食べます。中国では婚礼を紅事、葬儀を白事とする文化があり、日本もかつては白を葬儀の色としていましたが、キリスト教の影響でいつしか喪服は黒となりました。そして弔事に黒豆おこわが食べられ始め、今では慶事や弔事でもということになったとか。

今日は赤飯と黒豆おこわ、そして赤く発色させた黒豆の茹で汁を使った黒豆梅おこわの3つをお教えします。赤でも黒でも、間を取って両方でも、やっぱりおこわはおいしいですね(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「栗赤飯、黒豆おこわ、黒豆梅おこわ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・最近の炊飯器にはおこわモードもあるが、加熱むらが起きやすい。おこわ本来のおいしさを味わうには、もち米を蒸すに限る。

・蒸している途中でたす“ふり水”を酒塩(酒に塩を混ぜたもの)に替えると、旨みが増し下味もついておいしくなる。

・赤飯は小豆を茹でもどして茹で汁をとる工程があるが、最低でも一度にもち米3合分を作ることをおすすめする。まとめて作り、小分けして冷凍保存も可能。

黒豆の茹で汁に梅酢を加えて赤く発色させると同時にほのかな酸味を加える。梅酢がなければ黒豆の茹で汁に梅干しを入れ、しばらく炊いて梅の風味と酸味を煮汁に移す。







栗赤飯、黒豆おこわ、黒豆梅おこわ

「栗赤飯」(写真奥)


【材料(作りやすい分量)】
・もち米 3合

・小豆 60g

・酒塩 100~130cc(蒸し上がりの好みの堅さによる)
作りやすい分量:昆布出汁50cc、日本酒50cc、塩4g

・栗 1人につき1個

・松の実(いる) 適量

【作り方】
1.小豆は強くこすらないように気をつけて洗い、鍋に入れ600ccの水を注ぎ30分おいて吸水させる。鍋を火にかけて沸いたら弱火にして小豆を茹でる。茹で汁に小豆の色素が移り(「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真参照)、小豆が好みの堅さになったらざるに上げて小豆と茹で汁を分ける。茹で汁は冷ましておく。

2.もち米は1時間以上前に研いでざるに上げておき、冷めた小豆の茹で汁に2時間つける。

3.ざるにガーゼを広げて、その上に水気をきったもち米を広げる。蒸気が通りやすいように真ん中部分はくぼませておく。

4.蒸気が立った蒸し器に、3のもち米をざるごと入れて中火で蒸す。10分蒸したら一度蒸し器からざるを取り出して、ガーゼを持ってもち米だけをボウルにあける。用意しておいた酒塩を加えて、酒塩が全体に回るようにしゃもじで混ぜ、茹でた小豆も加え混ぜる。再度ガーゼを敷いたざるにもち米を戻して蒸し器に入れ、再度、7~8分中火で蒸す。

5.鬼皮と渋皮を向いた栗は10〜15分ほど蒸したら、予熱したオーブントースターで焼き目をつける。

6.蒸し上がった赤飯を器に盛り、4つに切った栗といった松の実を添える。

「黒豆おこわ」(写真手前右)


【材料(2〜3人分)】
・もち米 1合

・酒塩 35~45cc(蒸し上がりの好みの堅さによる)
作りやすい分量:昆布出汁25cc、日本酒25cc、塩2g

・黒豆(薄蜜煮または甘味なしで炊いたもの) 適量
薄蜜煮:黒豆250g、黒豆の戻し汁+水600cc、日本酒(アルコールを軽く煮きっておく)300cc、砂糖200g、濃口醤油小さじ1強

甘味なし:黒豆250g、出汁500cc、塩1g、薄口醤油大さじ1

【作り方】
1.もち米は蒸す1時間以上前に研いで、1時間水につけてざるに上げておく。

2.黒豆は柔らかく茹でもどした後に、好みで薄蜜、または出汁と調味料で10分炊く。「黒豆の蜜煮」参照。

3.ざるにガーゼを広げて、その上にもち米を広げる。蒸気が通りやすいように真ん中部分はくぼませておく。

4.蒸気が立った蒸し器に、3のもち米をざるごと入れて中火で蒸す。8分蒸したら一度蒸し器からざるを取り出して、ガーゼを持ってもち米だけをボウルにあける。用意しておいた酒塩を加えて、酒塩が全体に回るようにしゃもじで混ぜる。再度ガーゼを敷いたざるにもち米を戻して蒸し器に入れ、再度、7~8分中火で蒸す。

5.蒸し上がったら、炊いた黒豆を加え混ぜて器に盛る。

「黒豆梅おこわ」(写真手前左)


【材料(2〜3人分)】
・もち米 1合

・黒豆の茹で汁 180cc

・梅酢 10cc

・酒塩 35~45cc(蒸し上がりの好みの堅さによる)
作りやすい分量:昆布出汁25cc、日本酒25cc、塩2g

・黒豆(薄蜜煮または甘味なしで炊いたもの) 適量

・干し梅(なければ梅干しをちぎったものでもよい) 少々

【作り方】
1.黒豆の茹で汁に梅酢を加えて発色させる。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真参照。

2.1時間以上前に研いでざるに上げておいたもち米を1の黒豆のもどし汁に2時間つける。

3.蒸し方と酒塩の加え方は「黒豆おこわ」の3、4と同じ。

4.蒸し上がったら、炊いた黒豆(「黒豆おこわ」と同じ)を加え混ぜて器に盛り、干し梅を散らす。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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